キーワードは「コロナ慣れ」。2020年下半期のドル円相場を展望する

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2020年もあっという間に折り返し点を過ぎました。ここまでの為替相場を振り返るとともに下半期を展望してみたいと思います。


ドル円は乱高下の後、安定化

言うまでもありませんが、今年は新型コロナウイルスの世界的な流行(パンデミック)に翻弄されてきました。

ドル円相場は2月20日に一時112円23銭をまで下がる場面があったものの、欧米諸国で感染拡大が急速に進む中、3月3日には101円19銭まで一気に円高に振れました。ちなみに、昨年1年間のドル円相場の値幅は7円94銭でしたが、わずか2週間足らずでこれを超過した格好です。

ドルが安値をつけた後も、なかなか市場の動揺は収まりませんでした。今度は国際決済通貨であるドル争奪戦が起こり、3月24日には一時1ドル=111円71銭へと急反発しました。「有事のドル買い」という陳腐な表現を使うことがはばかれるほど、凄まじい状況でした。

もっとも、極度のドル不足に対応すべく、主要国の中央銀行が協調して大量のドル資金を市場に供給した結果、急激なドル高は一巡しました。

このように乱高下したドル円相場ですが、4月以降は嘘のように落ち着いた値動きとなりました。足もとでは、経済活動再開後の米国の指標が急回復を示す一方、新型コロナウイルスの感染再拡大が重石となっており、方向感が定まりにくい状況と言えそうです。

リーマンショックとコロナショックの最大の違い

さて、2008年に起きたリーマンショックは百年に一度の危機と呼ばれましたが、今回のコロナショックの経済的なダメージはそれ以上かもしれません。しかし、金融市場に当時ほどの悲壮感はないように見えます。この違いは何に由来しているのでしょうか。

リーマンショックとコロナショックの最大の違いは、救済すべき対象です。リーマンショックで深い傷を負ったのは金融業界だったのに対し、今回のコロナショックにおいては一般の事業者や家計です。いわゆる「ウォールストリート」、「メインストリート」と対比されます。

当時、「ウォールストリート」の救済は世論の反対が強く、各国政府とも初動の段階では、金融機関への資金注入にやや慎重だった印象です。一方、今回の「メインストリート」の救済はそれほど世論の反発を招くことがなく、多くの国において大規模な財政支出の発動が迅速になされました。

円高ドル安基調とならないのはなぜか

また、リーマンショックの反省を踏まえ、各国の中央銀行が信用不安の回避に尽力していることも市場の安心感につながっています。

米連邦準備制度理事会(FRB)が社債を買い入れるなど前代未聞のことですが、金融危機や信用危機が起こったときのコストがいかに大きいかを前回経験しているだけに、導入にためらいはなかったと思われます。

現状、ドル円相場がリーマンショック時のように円高ドル安基調になっていないのは、このように未曾有の財政・金融政策によって金融市場のリスクセンチメント(市場心理)が安定していることが挙げられそうです。

例えば、セントルイス連銀が公表し、市場の緊張感や不安度を示す金融ストレス指数は一時跳ね上がったものの、瞬時に平常レベルに回帰しています。

市場の先行きは

では、今後とも市場の不安心理が台頭することはないのでしょうか。確かに先行きは不透明と言わざるを得ません。現状、世界経済のV字回復シナリオを信じる市場関係者はかなり少ない印象です。コロナ禍の収束時期が見通せないだけに当然と言えば当然でしょう。

一方、世界的な規模で新型コロナウイルス感染者が再拡大していますが、今後、感染者数に対する市場の反応は徐々に薄らいでいくのではないでしょうか。流行した当初は、誰もが未知なるものに対して恐怖心を抱きましたが、疫学研究が進んだことで多くのことが分かってきたようです。

また、新型コロナウイルスを変革のドライバーとし、新しい時代に進むという前向きな意識が芽生えているのは確かでしょう。絶望しかなかったリーマンショック時とは大きな違いです。

キーワードは「コロナ慣れ」

当然ながら、市場の一部には、再び経済活動に大規模な制限が設けられることを警戒する声があります。ただし、新型コロナウイルスの正体がさらに暴かれていけば、過度に恐れる必要のない病気という意識が広がるはずです。

一般社会も金融市場も恐る恐るですが、コロナとの付き合い方に慣れていくとみられます。仮にワクチンの実用化が遅れても、今年後半の世界経済は相応に加速するのではないでしょうか。

結局は慣れの問題です。インフルエンザ並みとはいかないまでも、日々の感染者数がそれほど気にならない時期はそう遠くない将来に訪れると思われます。「コロナ疲れ」から「コロナ慣れ」へ市場が転換する中で、ドル円相場は110円方向へ水準を切り上げる展開を想定しています。

<文:投資情報部 シニア為替ストラテジスト 石月幸雄>