MotoGP:骨折により王座防衛に黄色信号が灯ったマルク・マルケス/スペインGP決勝レビュー(2)

 2020年MotoGP第2戦スペインGPのMotoGPクラス決勝でマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が転倒、右上腕を骨折する重傷を負った。

 マルケスは3番グリッドからスタート。スタートからトップ争いに加わり、3周目にはマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)を交わしてトップに浮上すると、1周につきコンマ1秒ずつほどリードを広げていく。ところが、5周目の4コーナーで転倒しかけ、マルケスらしい驚異的なリカバリーで転倒は免れたものの、グラベルに飛び出し、コースに復帰したときには18番手まで後退した。5周完了時点のコントロールラインを16番手で通過。トップとの差はこの時点で8秒444あった。

 復帰した5周目と続く6周目こそ、グラベルを走った際にタイヤに付着した汚れを落とし、タイヤ温度を適正に戻すために慎重に周回を重ねたマルケスだったが、その後はハイペースでポジションを挽回。10周目にこの時点でトップを走っていたファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)から約8秒差の10番手に浮上する。

 続く11周目にはこのレースのファステストラップとなる1分38秒372を記録し、さらに前を追う。その後も1分38秒台中盤のラップタイムを連発して、17周目には6番手、20周目には2番手を走るビニャーレスの背後に迫る3番手まで挽回する。

 しかし、残り4周となった22周目の4コーナーでマルケスはハイサイドに見舞われ転倒。マシンから投げ出された後、グラベルを転がっていたマルケスの右上腕に、後ろから滑ってきたマシンのフロントタイヤがヒットした。

 サーキット内のメディカルセンターでチェックを受けた後、ヘレス市内の病院に運ばれたマルケスだったが、精密検査の結果、右腕の上腕骨を骨折していることが判明。橈骨神経麻痺の可能性があったため、12時間の監視体制の下でこの日は入院した。そして、翌日の20日にはバルセロナの大学病院に移動。21日にMotoGPシリーズのメディカルスタッフであるチャビエル・ミル医師のチームによって手術を受けた。

 手術は骨折した上腕骨をチタン製のプレートと数本のボルトで固定。橈骨神経の麻痺はなく、手術は無事成功した。通常であれば8週間の重傷で、手術から最大48時間の入院が必要となった。

 この結果、連戦となる今週末の第3戦アンダルシアGPは欠場することになり、手術直後の段階では復帰に関しては未定とされているが、手術日から17日後となるブルノで開催される第4戦チェコGP、またはその翌週からレッドブル・リンクでの2連戦となる第5戦オーストリアGP、第6戦スティリアGPでの復帰をめざすことになりそうだ。

 今シーズンは、新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れた上、約4カ月で13戦の過密スケジュールで、連戦も続く中での短期決戦。緒戦をノーポイントで終え、2戦目も欠場と、チャンピオンシップの連覇に向けて、黄色信号が灯ってしまったマルケス。しかし、スペインGPで見せた驚異的な追い上げのように、チャンピオンシップにおいてもリカバリーを見せてくれるかもしれない。

「手術は順調で気分はいい。ミル博士と彼のチームに感謝したい。復帰を楽しみにしている。励ましのメッセージをありがとう!」と、マルケスはSNSでファンに向けてメッセージを発信している。

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