5点差でも8回モイネロ投入のワケ 鷹・工藤監督に石橋を叩かせた逆転負けの悪夢

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

5点リードとなった8回にセットアッパーのモイネロを投入した工藤監督

■ソフトバンク 6-1 日本ハム(26日・PayPayドーム)

ソフトバンクは26日、本拠地PayPayドームでの日本ハム戦に6-1で快勝した。初回に中村晃の適時打で先制すると、2回には今宮の適時二塁打などで3点を追加。先発の二保が6回途中1失点と好投すると、5投手を注ぎ込んでリードを守った。

6回の時点で4点をリードしていたソフトバンク。6回途中から川原、泉で凌ぐと、左打者が続く7回を“左キラー”嘉弥真が無失点に封じた。その裏、柳田のフェンス直撃の適時打で1点を追加してリードを5点に拡大。残るイニングは2回。勝利に向けてセーフティリードを作った。

それでも工藤公康監督は8回にセットアッパーのモイネロを投入。キューバ人左腕は自己最速を更新する158キロの剛球を投じて、内野安打こそ許したが、アウト3つ全てを三振で奪った。圧巻の投球でスコアボードにゼロを灯すと、9回はルーキーの津森がマウンドに上がって試合を締め括った。

8回のモイネロは今季33試合目にして、この試合が試合数の半分を超える17試合目の登板だった。工藤公康監督は5点のリードがありながら、シーズン序盤にして登板過多気味になっているモイネロをなぜマウンドへ送ったのだろうか。工藤公康監督は試合後にこう語っている。

7回に逆転を食らった「昨日と同じ轍を踏まないため」

「準備はさせていました。昨日と同じ轍を踏まないためには、8回は真ん中だったので、そこだけはなんとかという思いでいました」

まず、7回表を終えた時点で4点差だったため、モイネロが登板に向けてブルペンで準備を行っていたことが挙げられる。1点を追加したものの、あえて登板を変えずにそのままマウンドに上げた。そして、前日の敗戦も理由にあった。一時6点のリードを奪った25日の試合は7回の継投が裏目に出て、痛恨の逆転負けを食らっていた。

しかも、この回、日本ハム打線は3番の近藤から始まる好打順であった。一手間違えれば、昨日のような逆転負けに繋がりかねない。同じことは繰り返さないようにと石橋を叩く意味でも、全幅の信頼を寄せるモイネロを送り込んだのだった。その点、9回は下位打線から始まる。8回さえ抑えれば、逃げ切れる。その算段だった。

それにしても、今季のモイネロは凄まじい。これで17試合目の登板となったが、0勝0敗1セーブ13ホールドで防御率は1.13。唯一、失点した7月19日のオリックス戦も3点リードの場面で登板して1点差まで詰め寄られたものの、リードを守って9回の森に繋いでいる。ここまで救援失敗は一度もない。17試合で16イニングを投げて、30奪三振。奪三振率は驚異の16.875となる。

この日自己最速の158キロをマークしたようにスピードも強烈。「今年ボールの強さがまた一段と増したように見ている。頼りになりますし、走者を出しても抑えてくれるところは、彼がいてくれて良かったと思います」と語るように工藤監督も全幅の信頼を寄せている。不安材料は、少々多くなっているその登板機会。勝負所はまだ先にあるだけに、コンディションの管理は徹底していきたいところだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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