平和への思い音楽に託し 長崎県ミュージシャン 自作曲で表現

©株式会社長崎新聞社

ピースライブで「未来は変えられる」を披露するミュージシャンら=2019年8月9日、長崎市諏訪町(川久保さん提供)

 音楽で平和のバトンをつなぎたい-。長崎原爆の日(8月9日)前後に不戦を訴えるライブを開いたり、被爆や戦争の悲惨さを伝える曲を発表したりするミュージシャンが、プロ、アマチュアを問わず県内には多くいる。活動を始めたきっかけやオリジナル曲に込めた思いなどを聞いた。

 昨年8月9日、長崎市諏訪町で開かれた「ピースライブ」。広場にステージが設けられ、アマチュアバンド約10組が出演。平和や反戦などをテーマにさまざまな曲を演奏した。クライマックスはオリジナルのテーマソング「ピースライブ 未来は変えられる」。出演者や観客が力強く歌い、平和への思いを一つにした。
 ライブは同市のアマチュアミュージシャン川久保繁(54)が発起人となり、2015年から毎年開いている。川久保は被爆2世。爆心地近くで育ち、高校卒業後、就職で横浜に移住。ある日、訪問販売員から「被爆者の遺伝子にも効果がある」と健康食品の購入を勧められ、差別するような物言いにがくぜんとした。「被爆者に対する認識が長崎と、よその土地では違う。改めて気付かされた」。そうした経験から「もっと多くの人に原爆や平和について考えてもらいたい」と思いを強くし10年にUターン後、音楽仲間を集め、ピースライブを始めた。
 18年には170人が出演。今年はコロナ禍のため規模を縮小し、9日午後3時から長崎市平野町の長崎原爆資料館前で開く。「出演者が少なくても息の長い活動を続けたい」と語る。
◆ ◆ ◆ 
 平和のメッセージを曲に乗せて伝えようとするプロもいる。同市のシンガー・ソングライター果里(かりん)も被爆2世。11年、戦地から戻らなかったという伯父(母の長兄)への思いなどを曲にした「重たい銃」を発表。過去に原爆や戦争をテーマにした曲の制作を勧められたことがあったが、「戦争体験のない自分には曲が書けなかった」。それでも、戦争映画を見て在りし日の伯父を思いだし涙する母を見て心が動いた。「母にとって戦争は終わっていない。自分が体験していなくても、平和の大切さについて感じる気持ちを素直に詩につづろう」と決意した。その後、14年には反核を歌う「ばくだんはいらない」をリリースした。
 昨年8月、同市松山町の爆心地公園で開かれた「平和への祈りコンサート」に出演。このコンサートのために書き下ろした曲「平和への祈り-hold hands-」を歌い上げた。「未来に希望をもってほしいという気持ちを込めて作った。子どもたちに歌い継いでもらえるとうれしい」
◆ ◆ ◆ 
 佐世保市でプロとして活動するピアニスト重松壮一郎(47)は、以前、広島で被爆したピアノを使って演奏会を開いたことをきっかけに広島、長崎で原爆の日前後にライブを開くようになった。
 16年には原爆をテーマにしたオリジナル曲「忘れえぬ記憶」をCDアルバムに収録。被爆の悲しみ、苦しみをつづった歌詞が美しいメロディーで歌われ、聴く人の胸を打つ。「被爆体験がない自分が原爆の曲を演奏することに抵抗感を持つ人もいるかもしれない。それでも自分なりに平和の大切さを次の世代に伝える使命がある」。そんな思いを胸に、重松は今年も9日に長崎市内でライブを開き、この曲を演奏するという。
=文中敬称略=

原爆落下中心地碑前で「平和への祈り-hold hands-」を歌う果里=2019年8月8日、爆心地公園(果里さん提供)