フジロックにも出演 活動の場広げる音楽家 角銅真実さん=北松佐々町出身=

角銅真実さん(廣田達也さん撮影)

 長崎県北松佐々町出身で音楽家・打楽器奏者の角銅真実(かくどう・まなみ)さん(31)=東京=が、自作曲やカバー計13曲を歌ったアルバム「oar(オール)」(ユニバーサルミュージック)を1月発表し、メジャーデビューを果たした。優しく繊細な歌声と豊かな音楽性で注目され、昨年は「フジロックフェスティバル」にも出演。22日、佐世保市三浦町のアルカスSASEBOで開かれる「アルカス九十九島コンサート」に出演し、地元で歌声を響かせる。

 打楽器奏者として頭角を現し、近年はCMなど映像媒体への楽曲提供、原田知世さん(長崎市出身)への歌詞提供など活躍の場を広げている。「以前は徹底して個であろうとしながら『自分の言葉』として音楽をやってきた。でも今は、いろいろな文化や歴史を学びながら、そこに自分の音楽がつながっていく広がりが楽しい」と、心境の変化を語った。

■学校は苦手
 福岡市で生まれて間もなく佐々町に引っ越し、以来高校卒業まで過ごした。父が音楽好きなこともあり、流れてくる音楽に合わせて踊って遊ぶのが好きな子どもだった。中学の吹奏楽部でマリンバなどの打楽器を始め、県立佐世保西高(佐世保市)でも吹奏楽を続けたが、学校にはあまりなじめなかった。
 「『どうして』と聞いても『決まっているから』と返ってくるような、学校の規則やムードや人が苦手だった。この先どんな指針で生きていこう、どんな大人になりたいか、自分ってなんだろう-とずっと考えているような子だったので、ある意味学校どころではなかった」
 部活も休みがちだったが、楽器のある部室は大事な居場所に。「早朝に来てマリンバをはじいたり、教室に行きたくない時に毛布にくるまって漫画を読んだり。自分を受け入れてくれる場所だった」と話す。

■自分奏でる
 「音楽そのものというよりも、言葉で説明できないものに携わりたい」と考えて、高校卒業後は東京芸術大音楽学部に進学。器楽科で打楽器を専攻し、基礎から学んだ。2年から著名な打楽器奏者、作曲家の高田みどりさんの指導を受けた。「とにかく基礎が大切という教えで、物から音を出すということが、どういうことなのかを日々考えさせられた」という。
 一方で、クラシックなどの西洋音楽中心の学びには疑問も感じた。「誰かの、どこかの音楽ではなく、今、ここにいる自分の音楽を奏でて社会と接したいと思うようになった」
 在学中からオーケストラなどの演奏の仕事に携わり、卒業後は自身の作品を少しずつ発表。演奏活動に加え、次第に美術館の展示作品や映像のための楽曲制作もするようになった。

■問いや発見
 「歌」に興味が出てきたのは、大学卒業から4年ほどたった2016年ごろ。「自分のことも楽器にできるじゃん」という思いがあった。演奏に自身の声や歌を混ぜたり、パーカッションとして呼ばれたコンサートでコーラスも担当したりすることが増えた。
 17年に初のアルバムを発表。通算3枚目となる「oar」では、ボーカルのほか打楽器やピアノ、ギターも自身で演奏し、心地よい多彩な音楽を届けている。
 誰かに聴いてもらう作品として曲を作る時には、そこに「問いや発見」があることを大事にするという。「曲を聴いた人が『何だったんだろう?』と思うような新しいもの、自分でも聴いたことのないものを作りたい」と目を輝かせた。

 「アルカス九十九島コンサート」は22日午後2時開演。入場無料だが座席指定整理券が必要。

「oar」(ユニバーサルミュージック)のアルバムジャケット

© 株式会社長崎新聞社