読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、29歳、会社員の男性。奨学金500万を返済しながら家計をやりくりしている相談者。奨学金の返済と親の介護のことを考えると、将来に希望が持てないといいます。FPの飯田道子氏がお答えします。
奨学金有利子440万・無利子100万を返済中。奨学金の返済・親の介護・自身の将来を考えると希望が持てません。
【相談者プロフィール】
・男性、29歳、会社員、未婚
・同居家族について：一人暮らし
・住居の形態：社宅
・毎月の世帯の手取り金額：18万円（家賃は支払い済み）
・年間の世帯の手取りボーナス額：なし
・毎月の世帯の支出の目安：12〜13万円
【支出の内訳】
・住居費：なし
・食費：3万円
・水道光熱費：7,000円
・教育費：なし
・保険料：なし
・通信費：7,000円
・車両費：なし
・お小遣い：3〜4万円 医療費・日用品等含む。余れば貯金
・その他：3万7,000円奨学金（有利子2万3,000円、無利子1万4,000円)
【資産状況】
・毎月の貯蓄額：6〜8万円
・現在の貯蓄総額：50万円
・現在の投資総額：なし
・現在の負債総額：なし
飯田：働きながら奨学金の返済している相談者様。ご両親の介護やご自身の将来を考えると、「希望が持てないと」言うことを相談して頂きました。相談者様には、今後、どのようなことを考えて生活すれば良いのか、どのような準備をするべきか、考えてみたいと思います。
まずは自分を褒めてあげてください
奨学金を利用して進学したために、現在の借入金は有利子の借入金が440万円。無利子の借入金が100万円。合計500万円を返済しなければなりません。単純に20代で500万円の借入金があると考えると、やりきれない気持ちになるかもしれませんし、希望を持つことはできないかもしれません。
今は、多くの学生が奨学金を利用して大学へ進学していますが、相談者様も自分の力で進学し、卒業したことは立派ではありませんか？ まずは〝頑張った自分″を褒めてあげてください。
両親の介護との向き合い方
情報が少なく、現在、親御さんに介護が必要なのか、将来の介護について考えているのか分かりませんが、介護が必要になったときのお金をどのように準備するのか、優先順位を明確にしておくと良いでしょう。
たとえば、このように優先順位を決めてみてはいかがでしょうか？
順位（１）：ご両親の預貯金や資産
順位（２）：兄弟姉妹で分担
順位（３）：相談者様が負担
（１）ご両親の預貯金や資産
あくまでも、ご両親にかかる介護の費用です。まずは、ご両親の預貯金や資産、受給する年金から費用は支払うようにします。
（２）兄弟姉妹で分担
ご両親のお金では足りない場合には、相談者様を含めた兄弟姉妹で均等に分担するようにしてください。支払えない兄弟姉妹がいる場合には、買い物などの雑務をする、介護保険適用外で所用があるときには手伝う等、お金を出さない場合には、労働を対価にすることをルール決めするといいでしょう。
（３）相談者様が負担
相談者様が一人っ子で、ご両親のお金では足りない場合には、相談者様が不足分を補てんするようにします。
自分一人で抱え込まないことが大切
相談内容から推察すると、相談者様は、責任感が強い方のようですね。
だからと言って、一人で抱え込む必要はありません。
お金の問題は、後々、揉める火種となりますし、一人っ子で自分がご両親の介護にかかる費用や介助などのサポートをなければならないと考えると、先が見えない不安に襲われてしまうかもしれませんね。
万一、介護が必要なときには、介護保険を上手く使えるよう、担当のケアマネージャーさんと充分のコミュニケーションを取るようにしてください。
介護は、される人よりも、する方に精神的な負担が重くのしかかることが少なくありません。一人で抱え込むことはせず、専門家と連携し、各種助成金などについても情報収集することを考えてみてください。
今後の生活について
現状のお金の流れを拝見すると、奨学金の返済をしながらも毎月の貯蓄額は6～8万円、貯蓄額は50万円もあり、素晴らしいと思います。特に無駄な出費をすることなく、計画的にお金を貯めていくことはなかなかできるものではありません。
奨学金の返済は、いつまで続くのかはご存知だと思いますので、ライフプランの作成をしてみてください。何年後に結婚するのか、マイホームを購入するのか等、何をするのか、したいのかを考えてみて欲しいと思います。今の状態では、夢や目標を持ってはいけないと考えているようですが、決してそんなことはありません。
あきらめたら、それで終わりです。
計画することは、誰にも迷惑をかけませんので、自分が叶えたいことは何か、本当の気持と向き合ってみてください。
繰り上げ返済も検討する
毎月、しっかりと貯蓄をされている相談者様のことですから、繰り上げ返済の計画も立てていらっしゃることだと思います。繰り上げ返済は、できるだけ早いタイミングでする程、総返済額を少なくする効果が高くなります。現在の貯蓄の一部から繰り上げ返済用の貯蓄を行う等して、一日でも早く、完済できると、心が落ち着くのではないでしょうか？
ポジティブ思考にシフトしていく
本来、まじめな性格の相談者様なので、問題を正面から受け止めてしまうかもしれませんね。実を言うと、私は両親の介護によって、進学やキャリアをあきらめた経験があります。奨学金の利用はなかったものの、今の相談者様よりも若かったため、自分の思い描いていた夢を叶えられないのは苦しかったですし、どうして自分ばかり……という思いを持っていたこともありました。
でも、自分の選択に後悔はしていません。それは、その時にベストを尽くせたからだと思います。
相談者様もぜひ、自分が楽しめること、やりたいことにも耳を傾けて欲しいと思います。息抜きは大切ですよ。物事をネガティブに捉えると、それに引っ張られてしまいます。できるだけポジティブな発想が持てるよう、頑張ってみてください。影ながら応援しています。
