マンション住まいが長く続くと、リノベーションで玄関部分を検討する方も多いです。マンション内ではリノベーションが可能な箇所とそうでない箇所があります。こちらではマンションにおける玄関リノベーションのポイントや費用・期間、事例を紹介します。
マンションの玄関部分をリノベーションすることは可能?
マンションのリノベーションでは「できる箇所」と「できない箇所」の区別をしっかり付ける必要があります。そのうえで欠かせないのが「専用部分」と「共有部分」に対する理解です。専有部分とは、主に室内の居住スペースのことで、水回り設備やリビングの天井、フローリングなどを指します。この範囲内はリノベーションしやすい場所です。
対して共有部分とは、駐車場やエントランス、エレベーターホールなど、住民みんなが共同で使用する設備や場所のことです。ここには、バルコニーや窓枠、隣室と接する外壁なども含まれます。このエリアは基本、リフォーム・リノベーションができません。玄関ドアは内側が「専用部分」、外側が「共有部分」となるため、玄関ドアのリノベーションで許されるのは内側スペースのみとなります。
《玄関リノベーションで許される範囲》
- 壁紙・床材の交換
- 照明器具の設置
- 間取り変更
- 拡張工事
- 土間や上がり框の改修
- ウォークインクローゼットやシューズインクローゼットの設置
《玄関リノベーションでNGとされる範囲》
- 玄関ドアの交換
- 玄関ドア外側の塗り替え
- 外壁の塗り替え
マンションの玄関リノベーションのポイントは?
理想とする玄関リノベーションのかたちは好みやこだわりによってそれぞれ。とはいえ、最低限おさえておきたいポイントがあります。インテリアや収納、広さなどを決めるときは、リノベーションの目的や玄関に求める機能などを基準に考えてみましょう。
インテリア面と収納力を重視して検討する
玄関は「住まいの顔」であり、その家の第一印象を決める場所でもあります。収納スペースの拡充で実用的に機能させることはもちろん、インテリアを重視して「映える空間」を目指しましょう。
壁紙ひとつとっても、木目調や重厚な石模様など、さまざまなものがあります。床材の種類もクッションフロアからタイルまで豊富です。どれを選ぶかで印象はガラリと変わります。「生活感が出るインテリアにしたい」「個性的なデザインの空間にしたい」「間接照明を使って柔らかい明るさに」など、要望に合わせて素敵なプランを描きましょう。
シューズインクローゼットは大容量の収納確保が実現
大容量の収納確保を望むなら、シューズインクローゼットやウォークインクローゼット、もしくはその両方の設置を検討しましょう。設置場所や収納スペースの容量は、廊下や土間との位置関係、家族の人数を考慮して適切に選んでください。足回りのアイテムはもちろん、自転車やゴルフセット、バッグ、アウトドアグッズなどの収納も可能となります。
土間スペースはさまざまな用途で活用できる
「玄関は土間と靴箱だけのスペース」という固定観念を取り払い、自由に発想してみることが大切です。たとえば、玄関土間と居室・リビングが直接つながるような設計にすれば、一体感を味わえるようになります。また、少し広がりを持たせるだけで、趣味のアイテムやコレクションを飾る陳列スペースができあがります。その他、さまざまな収納スペースや通路を確保し、快適な空間に仕上げることもできます。
マンションの玄関リノベーションの費用相場
マンションの玄関リノベーションの費用相場は、どんな工事をするかで変わってきます。壁紙や床材を張り替えるにしても、その種類やグレードによって高くもなれば安くもなります。計画段階で費用の相場をつかんでおきましょう。
壁紙・床材の張り替えや照明・収納設置などの工事の場合
間取りを変えず、壁紙や床材を張り替えて照明・収納を設置する場合、費用は25万~50万円となります。壁紙張り替えの施工費は、1㎡あたり1000~1500円、壁・天井合わせて6帖くらいのスペースであれば、3万~6万円が相場です。
床材の交換費用は、施工方法や素材の種類、性能によって変わる点に注意してください。いずれにしても、施工費はリノベーション業者によって異なります。事前の見積もりでしっかりと確認することが大切です。
収納棚の設置費は最低でも10万円以上かかる
玄関リノベーションといってもさまざまな方法があります。なかでも例が多いのが、収納棚のオーダー設置。家族が増えたり、子どもが大きくなると、靴やベビーカー、レジャー用品などを収めるスペースの必要性が増すことから、多くの方が希望されます。
玄関スペースに設置する収納棚は既製品とオーダーメイド、どちらがよいかで迷う方も多いでしょう。オーダー収納の設置となればどうしても割高になります。一方で、サイズや収納量、引き出しの数などを自由に決められるのが魅力です。玄関の雰囲気にマッチするデザインオーダーも難しくありません。こだわりが強い方ほどオーダー設置が適している傾向にあります。収納棚のオーダー設置の場合、最低でも10万円以上はかかると見ておいたほうがよさそうです。コストがかかる分、こだわりをかたちにできて、理想の住まいに近づけます。
玄関土間の拡張工事の場合
玄関土間の拡張工事を行う場合、費用の目安は50万~100万円です。壁を取り壊して新たに壁を設置するなどの大規模な工事となるため、クロス張り替えリフォームや収納棚の設置より高額です。
玄関リノベーションにかかる工事期間は?
戸建て住宅リフォームと比べ、マンションのリノベーションには時間がかかるのが一般的です。玄関クロスの張り替え工事などは1日程度、拡張工事は約1~2週間というふうに、工事自体にそれほどの時間はかかりません。時間を要するのは、手続きや準備といった工事前に行う作業です。
とくに時間がかかりやすいのが、申請手続きです。マンション内のリノベーションの場合、工事契約の前に管理組合の承認を得る段取りを踏まなければなりません。それだけでなく、工事告知のためのあいさつ回りを行う必要があります。このような諸手続きを計算に入れて、1~2カ月見ておく必要があります。
玄関の「印象を変える」リノベーション事例
玄関は家を訪れた際に最初に目に入る場所です。玄関の印象はそのまま家の印象を決めるといっても過言ではありません。玄関のカラーや雰囲気はなにより大切です。以下では、玄関リノベーションの事例を紹介します。
玄関の雰囲気に合わせて床材・壁紙を張り替える
玄関の雰囲気は床材・壁紙ひとつで変わります。大理石の素材ならモノクロで高級感あるトーンに、木目調の素材で自然の癒しを感じられる雰囲気に仕上がります。木目や石素材などは清潔感があるため、多くのリノベーションで取り入れられているのが特徴です。
自然で柔らかさのある照明を取り入れる
ダウンライトや間接照明など照明器具の導入も人気のリノベーションのひとつ。柔らかい光の演出には、暖色系の間接照明は温かみある雰囲気を醸し出す効果が期待できます。上がり框やシューズクローゼットの下部など、仕込むポイントはさまざまです。照明の光で浮かび上がる空間はどこか幻想的で不思議な魅力があります。
玄関土間の床材を交換する
玄関土間(たたき)の床材リノベーション。選べる素材の種類は、タイル、天然石、コンクリート、モルタルなど豊富にそろっています。土足で入る玄関土間の床材として主に選ばれるのは、クッションフロアやフロアタイルなどです。
なお、玄関土間の床材をDIYで交換する方法もあります。クッションフロアなどは柔らかい素材で切りやすく施工も比較的簡単なことから、個人で張り替える方もいるほどです。素材はホームセンターなどで用意して、施工は業者に任せるといった方法も可能です。ただし、マンションによっては選べる床材が管理規約で決まっているため事前に確認が必要です。
クッションフロアは費用を抑えた設置が可能
できるだけ費用を抑えたい。そんなニーズに対して選ばれるのがクッションフロアです。コストが低いうえに、水漏れに強く施工がしやすいといったメリットがあります。雨に濡れた自転車や雨合羽、傘などの置き場にも最適です。
大理石調のフロアタイルは足元が明るい印象に
ラグジュアリーな雰囲気を醸し出す大理石調のフロアタイル。床一面に敷き詰めることで足元が明るい印象になります。高級ホテルやタワーマンションのエントランスに使用されるイメージのある大理石ですが、住宅用の素材であれば大理石調のフロアタイルでも十分でしょう。開放感とぜいたくな気持ちを同時に味わえます。
石調フロアタイルはホテルライクな印象を演出
上質な石調フロアタイルを敷き詰めた、ホテルライクなリノベーション例もあります。ブラウンやベージュといった落ち着いたトーンのタイルはダークブラウンのシューズクローゼットと相性がよく、スタイリッシュな印象を与えます。
玄関土間とリビングをつなげて一体化
玄関ドアとリビングを切り分けず、あえて一体化させるリノベーション事例もあります。そこは玄関というよりリビングの一部と化した空間。靴を収納するスペースはもちろん、アウトドアグッズなどを納める場所としても便利です。グッズのデザインに合わせて壁紙や塗装のイメージを決めることで、より統一性のあるインテリアに仕上がります。
「収納力を向上させる」玄関リノベーション事例
間取りやインテリアデザイン次第で、大容量の収納空間を実現できます。アイデアとセンス、インスピレーションを駆使して唯一無二の玄関を手に入れましょう。ここでは、「収納力」を重視した玄関リノベーションの事例を紹介します。
駐輪スペースを確保
マンションの駐輪場や玄関前に自転車をとめておくのは何となく不安、という方は多いでしょう。玄関に十分な奥行きを設けることで、駐輪スペースを確保することが可能です。また、壁面を活用することで収納台数の幅も広がります。
シューズインクローゼットを設置
玄関に新たなシューズインクローゼットを設置するリノベーションも定番です。玄関の拡張で空いたスペースにシューズインクローゼットを設けることで、収納力は各段に向上します。おもちゃやベビーカーなどの子ども用アイテムから、カバンや趣味に関する道具までいろいろなものを収納できる便利なスペースに生まれ変わります。
土間を広く取り、ウォークスルークローゼットにつなげる
クローゼットにはさまざまなタイプがありますが、ウォークスルークローゼットを利用して隣接の空間とつなげる方法も選ばれています。収納スペースがそのまま通路となるユニークなアイデアで、「移動の時短」を可能にします。
人が通り抜けられるウォークスルークローゼットの設置なら、玄関から遠い寝室と結ぶことも可能です。土間は広く取ってあるため、開放的な空間にできる点もメリットです。クローゼット内はコートやアウター、バッグなどの保管場所としても最適。かけられた洋服はディスプレイ展示のようで、アパレルショップのような雰囲気を味わえます。
オープン棚を設置して開放感あふれる収納
オープン棚の設置で「見せる収納」を実現。開放感があって見ていて楽しい靴の飾り棚です。ディスプレイを意識した靴収納は、単におしゃれというだけでなく、靴をしまうときに開閉するアクションをショートカットできるなど、実用性にも長ける収納術といえます。