「不要不急」再び?

 あれっ、入ってない。先日発表された今年の「新語・流行語大賞」候補の30語。ほぼ半数が新型コロナ関連ワードという結果は予想通りだが、意外に感じたのは「不要不急」が選外だったこと▲その用事は欠かせないのか、今なのか、と皆が神経をとがらせた春だった。一方で「不要」や「不急」を削り落とした生活の味気なさも、「要」や「急」が人によって違うことも、それを一律の物差しで測ろうとする息苦しさも知った▲新語の一覧表から漏れたのは、言葉の寿命が思いのほか短かったせいか、と考えていたら、昨日、久しぶりにこの言葉を聞いた。「重症化リスクの高い人や基礎疾患のある人は不要不急の外出自粛を」と要請したのは大阪府▲新規感染者の数字だけを見れば、状況は春よりはるかに深刻に思える。気温はまだまだ下がる。季節の巡り合わせもよくない。しかし、政府の反応は鈍い▲菅義偉首相は“マスク会食”の励行を呼び掛けた。それ以上の発言は、単純な価格操作で需要喚起を図った一連の「Go To」の誤りを認めることになる、とでも考えているのか▲会話はマスク越しで-大切な作法には違いないが“箸の上げ下ろし”の話だ。政治の仕事とは思えない。「急」を「要」する決断がありはしないか。そこから逃げていないか。(智)


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