59歳までに知りたい「将来の年金額を増やす」3つの方法

老後に受け取れる老齢年金の額は、どのように決まるのでしょうか。多くの人は、働いた期間と収入で決まります。つまり、「厚生年金に加入している期間」と「保険料をどのくらい納めたか」によって決まるのです。では、年金額を増やす方法はないのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの高伊茂が、将来の年金額を増やす方法を案内します。


できるだけ長く働き、遅く受け取る

サラリーマンは、厚生年金だけでなく国民年金にも加入していますので、老後の年金は老齢厚生年金と老齢基礎年金を受け取れることになります。将来の年金額を増やすには、大きく3つの方法があります。

ひとつは、「できるだけ長く働く」こと、もうひとつは、「遅く受け取る」こと。そして、もうひとつ、「60歳でリタイアを考えている人にお勧めの方法」があります。

① できるだけ長く働く

(1)加入期間が長いほど年金額が増える

50歳以上の人に届くねんきん定期便をご覧になると、年金に加入していた期間がどのくらいあるかを月単位で記載されています。年金額は加入していた月が多いほど年金額に反映されることがわかります。

したがって、厚生年金に加入しながら働けば、保険料を納めた期間も増え、将来の年金額が増えることになります。

国民年金と違って厚生年金は、原則として65歳まで加入することが可能です。そのため、60歳定年後の継続雇用制度あるいは再就職して厚生年金に加入することで、年金額を増加することが可能になります。

(2)働き方はフルタイムが良い

60歳以降も働く場合、パート的な働き方ではなくフルタイムなど厚生年金に加入できるようにしましょう。フルタイムで働けば、今までと同じような生活のリズムを継続できるので健康維持につながり、実収入を得ることもでき、将来の年金額も増えるなど、良いことばかりです。

② 遅く受け取る

(1)年金を繰下げて受け取ると年金額が増える

ねんきん定期便のはがきに、「年金受給を遅らせた場合、年金額が増加します。」との表示が増えました。
では、どのくらい増えるのでしょうか。「70歳を選択した場合、65歳と比較して最大42%増」と印刷されています。

具体的には、次のとおりです。
年金を65歳から受け取らず66歳以降70歳になるまでの間に年金を受け取る場合は、1ヵ月あたり0.7%増えるということです。仮に65歳から受け取る年金額が100万円の場合、66歳ちょうどから受け取る場合は108万円4,000円となります。
最大42%増になるというのは、65歳から受け取る場合の100万円が70歳から受け取るようにすると142万円になるということです。

「65歳まで働いて年金額を増やして、70歳まではそれまでの預貯金で暮らして、70歳から増額した年金で暮らしていく」というライフプランも一案でしょう。

(2)年金の法改正で最大84%増加に

また、2020年に年金制度の法律の改正がありました。その結果、最大10年遅らせることができるようになりました。10年繰下げて75歳からの受け取りにすると、最大84%も増加します。65歳で100万円の人は、2倍近い184万円にもなるのです。スタートするのは令和4年(2022年)4月からですが、適用対象となる生年月日の制限があります。昭和27年(1952年)4月2日以降生まれの人が対象になりますので、それより前に誕生日のある人は現行どおり最大5年の繰下げですので、ご注意願います。

国民保険は「任意加入だった時代」がある

③ 60歳定年でリタイアを考えている人にお勧めの方法

(1)国民年金の任意加入制度で老齢基礎年金を満額にする

国民年金は、20歳以上60歳になるまでの40年間加入することになっています。したがって、サラリーマンだけでなく自営業やパートの人、無職の人や学生も加入義務があり国民年金の保険料(令和2年度は、月当たり1万6,540円)を納めることになっています。

ところが、1991(平成3)年3月までは20歳以上でも学生は国民年金に任意加入であったため、多くの人は保険料を納めていませんでした。「会社に就職してから保険料を納めはじめた」という人が大半です。学生時代に保険料を納めていなかった人は、65歳からの老齢基礎年金が満額にはなりません。

そのような人は、厚生年金に加入していなければ、60歳以降も国民年金に任意加入できます。60歳でリタイアした人は、厚生年金からはずれる人も多いでしょう。つまり、国民年金の任意加入の資格者になります。年金額を増やしたい人は、任意加入の手続きをして老齢基礎年金を満額にしましょう。

(2)付加保険料も納めて年金額を増やそう

国民年金に任意加入する場合、付加保険料も納めることをお勧めします。

付加保険料の月額は400円です。付加保険料を納めると老齢基礎年金の額に月当たり200円の付加年金が加算されます。たとえば2年間付加保険料を納めると総額9,600円(400円×24月=9,600円)納めることになりますが、年金額が毎年4,800円増えますので2年で元が取れるのです。老齢年金は終身受け取れますので、長生きすればするほど得になります。


以上、年金制度は複雑ですが、知らないと損すること、知っていると得することがたくさんあります。1963(昭和38)年にわずか158人だった日本の100歳人口は、2019年7万人に到達したと思ったら今年は8万人と、1年で1万人も増えています。「人生100年時代」、終身受け取れる年金をどのように増やすかは大事です。老後の三大不安のひとつである「お金」について、老後の年金を増やすことによって、不安を減らしましょう。

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