2020長崎スポーツこの1年<4> 東京五輪・パラ1年延期 試練乗り越えて前へ

東京五輪代表選考を兼ねた12月上旬の日本陸上選手権長距離種目。女子5000メートルで積極的にレースを引っ張る廣中(日本郵政グループ、右)=大阪市、ヤンマースタジアム長居

 日本スポーツ界にとって特別な1年になるはずだった2020年。待ち望んだ夏季五輪・パラリンピックの自国開催は、コロナ禍により史上初めて1年延期された。県勢をはじめ、夢舞台を目指すアスリートの競技人生にさまざまな影響を与えた1年になった。
 東京大会の延期が決まったのは3月24日。この時点で県勢は、柔道男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成、長崎市出身)、カヌー男子の水本圭治(チョープロ、岩手県出身)、ライフル射撃男子の松本崇志(自衛隊、島原市出身)らが五輪代表に内定していた。延期に伴う代表再考論も出たが、7月までに全員の内定が維持された。
 内定選手の多くは、競技人生を懸けて手にした出場権が宙に浮いたり、練習が制限されたりした時期も腐らず、それぞれのトレーニングに集中した。「慌てずにつくり上げていく」(永瀬)、「自分の漕ぎを見直すいい機会」(水本)、「あと1年、準備期間をいただいた」(松本)-。延期も追い風にして前進を続けている。
 パラ勢は卓球知的障害男子で社会人1年目の浅野俊(PIA、長崎市出身)が7月、代表内定の県勢第1号となった。19年のアジア選手権王者は、12月中旬にジャパン・チャンピオンシップでV2を達成。順調な成長ぶりを見せた。
 必然的に延長となった代表選考も徐々に再開し始めた。12月初旬の日本陸上選手権長距離種目。優勝すれば代表内定だった女子5000メートルの廣中璃梨佳(日本郵政グループ、大村市出身)は、惜しくも2位で内定持ち越しとなったが、そのレースを引っ張る積極的な走りは高く評価された。
 体操界の“キング”内村航平(リンガーハット、諫早市出身)は、個人種目別鉄棒に絞って復活。12月中旬の全日本選手権で他を圧倒して頂点に立った。団体競技もバスケットボール男子の田中大貴(A東京、雲仙市出身)を筆頭に、チームの主力を担う選手たちが多数そろっている。
 21年は仕切り直しの五輪・パライヤー。前例のない試練を乗り越えた県勢が、夢舞台でどんな輝きを放つのだろう。夏が今から待ち遠しい。


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