転職したのにうまくいかない…入社前に知っておきたい「壁」の正体

今、私たちの働く環境はとても不安定で複雑なものになっています。そのような中私たちは、自分を生かすことのできる働き方を自ら獲得していくことが求められています。

「転職」とはまさにその象徴的な場面と言えるでしょう。転職の成功は「入社」ではなく、「転職後に充実した仕事をすること」です。しかし、環境が変わってすぐに成果を出すことは容易ではありません。多くの人が、うまくいかなくなってしまう「壁」に遭遇しています。

調査の結果、この「壁」には一定の共通点があることがわかりました。今回は、活躍するまでにぶつかる「壁」と、それを乗り越えるポイントをご紹介します。事前に知っておくと、わが身に起きたときに対処がしやすくなるかもしれません。


コロナ禍での転職環境はどうなっている?

ここ数年、転職者も中途採用企業の採用数も増加傾向にありました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で採用数が一定期間減少することが考えられるものの、人材獲得意欲は冷めることはないと予想されます。

その背景には、企業が構造的な人材不足解消や、DX化促進に迫られていることが挙げられます。このような企業側の変革意欲は、新型コロナウイルスによってむしろ加速していると言えるでしょう。

一方で、働く個人側の観点でいうと、先が見通せない環境下で今後に不安を感じる中、自身を見つめ直す時間・機会が増えたことから、転職活動を始めた人が増えてきています。

このように、企業・個人どちらの観点からみても、「変わりたい、質を上げたい」という意識が高まっています。転職で得た新しい機会を生かし、自ら活躍を引き寄せキャリアづくりに結び付けていくことは、今後強く私たちに求められることになるでしょう。

活躍を阻む“壁”とは?

とはいえ、新しい環境ですぐに活躍することは至難の業です。転職後は業務内容はもちろんのこと、様々な勝手の違いに戸惑うことが多いでしょう。では、どのように取り組めば、自ら活躍を引き寄せることができるのでしょうか。

まず、活躍に至るまでのプロセスを確認し、その中で発生する「壁」について認識しておきましょう。未来に何が起こるのかを予め知っておくことで、自らに起こった「壁」を客観的に捉えることができ、能動的に超えることができます。

まず、新しい環境で活躍するまでのプロセスを確認しましょう。

__段階1:仕事・人・協働の仕方・風土文化などが複合した、新しい環境や状況に入る。
段階2:自分の持っているものが簡単に生かせない状況に陥る。
段階3:対処が必要な様々なこと=「壁」を認識する。
段階4:「壁」を乗越え、自身のエネルギーを自分自身で高めていく。__

段階3でぶつかる「壁」には人によって様々な種類があります。しかし、転職経験者に話を聞くと、ある程度の共通点があることがわかりました。それをまとめたものが、以下【組織・環境】【仕事内容】【自分】の3種類です。

【組織・環境】 互いを理解し、スムーズに協働する壁

● 職場の風土、コミュニケーションスタイルなどに「なかなか馴染めない」。
● 人によって言うことが違ったり、難しいことを急に要望されたり、周囲に「振り回される」。

【仕事内容】 仕事をこなし、成果をあげ、レベルアップする壁

● やることや覚えることが多く、何をどの順で学び、「どれから取り組めばよいか分からない」。
● 何故そうするのか、何のためにそうするのか、「背景や根拠が分からず」意思が込めにくい。

【自分】 自分のエネルギーを維持向上する壁

● 一歩の前進や小さな成果ではその程度と思ってしまい、「成長が実感できない」。
● 今やっていることが何につながっているのか、その「意味・価値を感じられない」。

皆さんも、程度の差はあれ、過去に経験したものがあるのではないでしょうか。

このような「壁」は、答えがあって一気に解決することは少なく、向き合い対処し続けることが必要になります。そのため、自分に何が起きているのかを客観的かつ明確に捉え、自分の勝ち(乗り越え)パターンを見つけることが有効です。

見落としがちなもう一つの「壁」とは?

前項でご紹介した「壁」は、言い換えると「業務を自ら推進するために必要な壁」です。しかし、転職時には見落としがちなもう一つの「壁」があります。「期待値と現実の壁」です。

人にはそれぞれ適応するために必要な時間があります。それに対して「なるべく早く適応したい本人」と「いち早く活躍してほしい受け容れ側」という期待値があります。その間で、少なくないギャップが生じてしまうのです。これが生じると、本人と受け容れ側の双方で、「ストレスがストレスを呼ぶ『負のループ』」が起きてしまいます。

この問題は、起きてしまうと簡単には解消しにくいため、双方が事前によく認識しておくことが大切です。転職者ができることは、まず自身がその状況を認識し、周囲に理解を求めていくことです。自分にとって最適な適応期間を確保することを務めましょう。

「壁」を乗り越えるヒントは過去にあり

新しい環境に飛び込むとぶつかる「壁」は、実はどこかで経験していることが少なくない「あるある」プロセスなのです。自身の過去を振り返ることで、立ち向かうヒントが多く得られます。

まずは、これまで自身が経験してきた「困難なこと」を思い出しましょう。些細なことでも結構です。そして、それを自らどのように克服してきたか、具体的に書き出します。そうすると自身の「克服パターン」が見えてくるはずです。

さらに、「壁」の種類別に書き出すと、自身がぶつかっている問題の全体像が理解しやすくなります。

乗り越え方が同僚や先輩など、同じような「壁」にぶつかったことがありそうな人に聞いてみるのも良いでしょう。

この「壁」は転職場面だけでなく、その後にやってくる新しい仕事や役割を担う度に繰り返し現れる本質的なものです。自身の未来のために、ぜひ「克服パターン」の蓄積をしてみてください。

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