12球団の今季MVPは誰? 総合指標「WAR」で見るチームへの貢献度【セ編】

広島・鈴木誠也、巨人・坂本勇人、阪神・近本光司(左から)【写真:荒川祐史、読売巨人軍、津高良和】

巨人の救援投手で貢献度1位は鍵谷、阪神野手は大山ではなく近本

2020年も残すところあと1日となった。新型コロナウイルスの感染拡大により開幕が延期となったプロ野球も120試合制でなんとかシーズンを終了。ソフトバンクが4年連続日本一となり、幕を降ろした。

セ・リーグは巨人、パ・リーグはソフトバンクが制した2020年シーズン。それぞれの球団でもチームに貢献できた選手もいれば、期待に応えられなかった選手もいる。そこでここではセイバーメトリクスの指標を用い、12球団それぞれのMVPを、先発投手、救援投手、野手からそれぞれ検証、選出してみた。

検証には打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を示す「WAR」という指標を用いる。この指標は最少コストで代替可能な選手に比べて、どれだけチームの勝利数を増やしたかを示し、データは、セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。

○巨人
先発:菅野智之(4.8)
救援:鍵谷陽平(1.3)
野手:坂本勇人(5.7)

2年連続でセ・リーグを制した巨人はエースの菅野と主砲の坂本が投打のMVPに。坂本はWAR5.7をマークしてチームトップ。本塁打、打点で2冠王に輝いた岡本和真はWAR5.3で坂本に次ぐ2位だった。最多勝に輝いた菅野は投手陣でトップのWAR4.8。中継ぎでは昨季途中に日本ハムからトレードで加入した鍵谷がトップ。中川皓太や高梨雄平よりも、WARにおいては貢献度が高いという結果になった。

○阪神
先発:西勇輝(3.7)
救援:ロベルト・スアレス(1.7)
野手:近本光司(5.5)

今季2位だった阪神では先発は11勝をマークした西勇、野手では打率.293だった近本がトップ。西勇はWAR3.7で青柳晃洋が3.1の2位だった。近本のWARは5.5で、2位の大山悠輔の3.6を上回った。打撃面では当然、大山の方が指標では上回っているものの、守備や走塁のトータルで見るWARでは近本が上に。リリーフは最多セーブのタイトルを獲得した守護神のスアレスがトップだった。

広島投手陣を支えたドラ1森下、奮闘したベテラン青木

○中日
先発:大野雄大(5.0)
救援:ライデル・マルティネス、祖父江大輔(1.5)
野手:大島洋平(3.5)

8年ぶりにAクラス入りした中日。WARで見る投打のMVPはエースの大野雄と大島という結果になった。20試合で11勝を挙げ、10完投6完封で最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを獲得し、沢村賞も受賞した大野雄は異論はないだろう。野手のトップは最多安打の大島でWARは3.5。高橋周平の3.4とは僅差だ。リリーフは守護神のR・マルティネスと祖父江が1.5でトップタイ。“大福マル”のもう1人、福敬登のWARは0.5だった。

○DeNA
投手:平良拳太郎(3.1)
救援:三嶋一輝、エドウィン・エスコバー(1.8)
野手:梶谷隆幸(4.6)

4位に終わったDeNAで最も高いWARだったのは野手は梶谷、投手は平良だった。リーグ2位の打率をマークした梶谷のWARは4.6。梶谷を上回り首位打者となった佐野のWARは2.3で、梶谷、オースティンに次ぐチーム3位だった。投手では4勝6敗だった平良の3.1がトップ。大貫晋一が10勝をマークしたものの、WARは2.4で平良を下回った。リリーフでは三嶋とエスコバーがトップの指標だった。

○広島
投手:森下暢仁(4.2)
救援:ヘロニモ・フランスア(1.5)
野手:鈴木誠也(5.3)

5位に終わった広島でMVPとなるのはドラフト1位ルーキーの森下、守護神のフランスア、そして主砲の鈴木という結果に。森下は10勝3敗、防御率1.91と圧巻の成績を残して新人王に。WARも4.2と投手陣の中でトップの指標となり、リーグ全体でも大野雄、菅野に次ぐ。リリーフはフランスアの1.5がトップでケムナ誠が1.4、島内颯太郎が1.1で続いた。野手は文句なしで鈴木誠。WARはセ・リーグで3位となる5.3だった。

○ヤクルト
投手:高梨裕稔(2.2)
救援:石山泰稚(1.9)
野手:青木宣親(5.0)

最下位に沈んだヤクルトで高い貢献度を示したのが、大ベテランの青木だ。リーグ3位の打率.317をマークして、18本塁打51打点の好成績を残した。村上宗隆が打率.307、28本塁打86打点だったが、WARでは村上の4.8に対して5.0の青木が上に。村上は打撃指標で優れていたものの、守備指標を加えた総合評価で青木が上に。先発では18試合に登板した高梨が3勝止まりながら、WARはトップ。リリーフは抑えの石山が1.9だった。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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