島のシンボル 設置から150年 長崎・伊王島灯台 九州初の西洋式灯台

設置から150周年を迎えた伊王島灯台=長崎市伊王島町1丁目

 長崎市の伊王島にある「伊王島灯台」は、2021年で設置から150周年を迎えた。九州では初めての西洋式灯台として誕生。長崎港に出入りする船舶の道しるべとして、長年航行の安全に貢献してきた。一方、灯台周辺には公園が整備され、島民にとっては憩いの場であり、島のシンボルのような存在と言える。
 長崎海上保安部や旧伊王島町教委の資料によると、伊王島灯台は、1866年に江戸幕府が英、米、仏、蘭の4カ国と結んだ改税約書(江戸条約)で国内に建てた8灯台の一つ。外交の観点から伊王島は特にオランダの強い要望があったとされる。
 71年に本点灯し、同年を灯台設置の起算点としている。鉄造六角形の由緒ある白色の灯台だったが、1945年に原爆の爆風で損傷を受けた。54年に取り壊して四角形の鉄筋コンクリート造として再建。71年には無人灯台となった。
 2003年9月、改修時に当初の六角形に復元。灯ろう部分は旧灯台のものを現在も使用している。
 「外国船にとっては貿易が盛んだった長崎に来るための目印。重要な地点だった」。長崎海保の瀬川普俊次長は、伊王島灯台の歴史的な意義を強調する。「今も遠洋航海の船舶には、光を届けることで『帰ってきた』との安心感を与えている」と、現代も役割を果たし続けていることを明かす。長崎海保は節目に合わせ、歴史や役割などをPRするイベントを開く計画だ。
 かつての伊王島は石炭の島として、人口が7千人を超えるなど栄えていたが、1972年の炭鉱閉山後は急激に過疎化。当時、旧町は「灯台を中心に据えた観光立町」を掲げていた。83年に完成した灯台公園は、子どもたちにとって遠足の定番コースだったという。
 最近では、高倉健さんの遺作となった映画「あなたへ」のロケ地にもなり、注目を集めた。伊王島出身で、市伊王島地域センター所長の荒木豊文さん(51)は「地元として誇れる場所。島外から来た人は必ず案内している」と胸を張る。
 「幼いころから行ったり来たりしていた所で、とても身近な存在」と語るのは伊王島地区連合自治会長の高田正男さん(71)。「海の安全を守るため、これまでの歴史以上に、これからも光り続けてほしい」と願いを込めた。

1962年ごろの伊王島灯台。当時は四角形だった(長崎市提供)

© 株式会社長崎新聞社