IOCの重鎮パウンド氏 五輪開催「確信できない」発言で潮目が再び変わる?

パウンド氏(ロイター)

2度目の“的中”はあるのか――。新型コロナウイルス感染者が爆発的に増加している中、国際オリンピック委員会(IOC)の「重鎮」として名高いディック・パウンド委員(78)の東京五輪開催を巡る発言が波紋を広げている。昨年春にいち早く「延期」を訴えていた人物だけに、今回は五輪開催へ影響を及ぼしかねない状況となってきた。

五輪開催地の東京都では7日に緊急事態宣言が再発令され、新型コロナウイルス新規感染者数は2日連続で2000人を超えた。民間の意識調査では「中止」を求める人が大半を占めている。

それでも主催側のIOC、大会組織委員会などは依然として開催のスタンスを崩さない。橋本聖子五輪相(56)は「世界中に希望と勇気を届けることが私の役割」と聖火リレーの準備を進める方針を示し、IOCのトーマス・バッハ会長(67)は「(五輪は)トンネルの終わりの光となる」と新年のメッセージを公表。組織委の森喜朗会長(83)も「不安は全くありません」と首尾一貫した姿勢だ。

そんな中、1978年からIOC委員を務める最古参のパウンド氏は英放送局「BBC」で「私は(東京五輪開催を)確信することができない。ウイルスの急増が進行しているからだ」と発言。他の関係者の意に反し、先陣を切って懐疑的意見を示したことは、まさに約10か月前の“あの時”と重なる。

コロナ禍が深刻になった昨年2月下旬、森会長は中止や延期を「デマ」と言い放ち、他の幹部も通常開催を主張していたが、パウンド氏は「1年延期」「中止の検討」と発言した。この爆弾発言投下は衆院予算委員会でも話題となり、橋本五輪相は「IOCの公式見解ではない」と否定。東京都の小池百合子知事(68)も“火消し”に奔走することになった。だが、延期の流れは止められず、その後は組織委の高橋治之理事(76)、JOC理事の山口香理事(56)らが追随して「延期」を提唱。3月24日に正式に延期が決定した。

この経緯を踏まえ、組織委関係者からは「今回も彼の発言で潮目が変わる可能性がある」と指摘する声が上がる。IOCに精通する関係者は「彼は弁護士でもあり、頭の切れる男。決して、じいさんのたわごとではない」と一目置くほど。別の組織委関係者も「現状をシビアに分析し、発言はちゃんと理論に基づいている。世界アンチ・ドーピング機関の創設時の会長でもあり、医学的な知識も豊富なので説得力はある」と強調した。

世間的には延期時以上に、パウンド氏の主張を「正論」と見る向きは多い。もちろん今後の動向次第だが、五輪開催が危ぶまれる状況になったのは間違いない。

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