明るい方へと

 2月初め、読者のお一人から便りをもらった。紙面の感想が丁寧に書かれ、世相にも触れている。〈活気がいまひとつの街並みを見ると、いつになったら元通りの元気な長崎になるのかしら、と思うのです 〉。深くうなずく▲その頃、飲食店は早めに閉まり、今なお閉めたままの店もある。街は人通りが少ない。寂しさをにじませながら手紙はこう続く。〈せめて背筋をピンと伸ばしていきたいと思います〉▲この方に限らず、もう長いこと人々が背筋を伸ばしてきた結果だろう。新型コロナの感染拡大で、長崎市、佐世保市では不要不急の外出を控えるよう求められてきたが、21日までで終了すると発表された▲「第3波」が押し寄せてきたのは昨年12月で、年末年始の帰省や親しい人との集まりも“お預け”にした人は数知れない。丸まってしまいそうな背を「今が我慢のしどころ」と伸ばす。そういう日々だったろう▲県外との不要不急の往来を控えたりと、県からの要請はまだ続く。決して油断ならないのは分かっているが、第3波がどうやら収まりつつあると知れば、安堵(あんど)の息が一つ、二つと思わず漏れる▲きのうは先行接種のワクチンが県内に届いたという知らせもあった。背筋を伸ばすだけでなく、日が差す明るい方へと手を伸ばす。そんな春になることを。(徹)


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