苦渋の決断 SSK新造船休止へ<下> 修繕ニーズ強みに将来図描く

©株式会社長崎新聞社

造船業界は中韓勢に対抗し再編や技術開発を進めている(左から時計回りにSSK、三菱重工業長崎造船所香焼工場、大島造船所のコラージュ)

 港には灰色の船が多数浮かんでいる。自衛隊や米軍の存在を抜きにして佐世保は語れない。安全保障を担う街で、佐世保重工業(SSK)も密接に関わってきた。かつては一部の岸壁やドックの優先使用権を握る米軍と対立した。だが、自衛隊はSSKにとって修繕の得意先だ。
 今後SSKはここに経営資源を集中する。中国の海洋進出を受け、自衛隊や海上保安庁は南西諸島の警備を強化している。親会社名村造船所(大阪市)のトップも兼務する名村建介社長は「佐世保は地政学的に優位性がある。艦艇の修繕ニーズは高まっており、十分戦える」とSSK存続に意欲を見せる。12日の会見では、売上高30億~70億円の修繕事業を100億円規模に引き上げる目標を掲げた。
 ただ、売上高全体(2020年3月期320億円)の8割近くは新造船。この中核事業を切ってまで抜本的な収益改善を迫られた背景にあるのは、中国と韓国の台頭。それは国内造船業界に通底する逆風でもある。
 近年、中韓各社は統合で規模を拡大。コスト競争力や技術力を高め、世界の19年建造量ランキングで3位までを占める。日本は今治造船(愛媛県今治市)が4位。ジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市)8位、大島造船所(西海市)11位、名村造船所14位、三菱造船(横浜市)16位-と後塵(こうじん)を拝する。
 中韓に対抗し国内でも再編は加速している。今治とJMUは1月、設計の新会社を共同で設立、国内シェアの約半分を握った。三菱は長崎造船所香焼工場の売却を含めた活用に向け大島と交渉中。名村社長も「他社と一緒に何かできないか常に考えている」と言う。
 新造船から手を引くSSKは人材や技術の流出が懸念される。名村造船所や修繕部門で一定吸収し影響を抑えるが、最大250人の早期退職に加え、仕事量が減る協力会社の事業と雇用の維持も課題となる。
 県は「できるだけ県内にとどめたい」と好調な半導体産業や自動車産業を受け皿として期待する。17日、SSK幹部を交えた緊急雇用対策会議で、再就職や業者間マッチングなど支援策の協議を始めた。
 生き残りをかける造船業界は技術革新にも力を入れる。「脱化石燃料」が世界の潮流となる中、三菱は二酸化炭素(CO2)の回収や貯留に使う運搬船の開発を検討。大島は自動操船可能な完全電池駆動船を開発した。他社もアンモニア燃料や水素燃料電池の実用化を急ぐ。
 名村造船所伊万里事業所(佐賀県伊万里市)で次世代船舶を建造し、佐世保が艤装(ぎそう)などで補完する-。名村社長はこう将来図を描き、「選択の余地を残しておく」とSSKの主要施設を維持する意向を示した。その目は「苦渋の決断」の先に差す光に向けられている。