【インタビュー】V長崎・吉田監督 「勝ち点重ね 笑顔届けたい」 長崎スタイルの確立を

V長崎の吉田監督。「長崎スタイルを築く」と意気込んでいる

 2年間の手倉森体制を引き継ぎ、今季からV長崎の指揮を執るのは吉田孝行監督(43)。開幕を目前に控えた現在の心境と、今季の戦い方を単独インタビューで聞いた。

 -監督を引き受けるのは神戸に続いて2クラブ目。
 昨年も長崎でコーチをさせていただいて、このクラブをJ1に上げて、J1でも上位に入って世界に行くためのベースをつくりたいと思った。チャンスをいただいたので、長崎県民に笑顔を届けられるように強いチームにしたい。

 -中期的なスパンというよりは、即結果が求められている。
 すぐに結果を出すのは当然大事なこと。ただ、自分としては長崎が一度J1でやっていたときに違うチームの監督として見ていて感じたことだが、昇格しても1年で降格するようなチームでは駄目。それはおそらくV長崎も前回J1で学んだはず。しっかりJ1で戦っていける戦術、長崎スタイルを築く。

 -今年のV長崎は、ポゼッションサッカーの成熟を掲げている。
 昨年からコーチの立場で自分がうるさく言ってきたことで大きくは変わらない。誰かを中心にとは、正直考えていない。全員で戦って勝っていくチームにして、個人個人の特徴を見てどのポジションや組み合わせがいいのかを考えている。守備の部分は昨年よりもコンパクトに守ることを求める。ようやくキャンプ明けからコンディションが上がってきた。開幕からしっかり自分たちのサッカーを見せて、勝ち点を積み重ねながらチームのエンジンをかけていければいい。

 -キャンプを取材して、吉田監督は選手一人一人に働き掛けるような時間を多く割く印象を受けた。前任の手倉森監督は選手のやる気を高めるモチベーターの色が濃かったが、指導者として自らをどのようなタイプだと捉えているか。
 監督という立場になると選手を選ばないといけない。みんな出したいけれど11人しか出られない。そのときにどうマネジメントするか。選手と監督も当然、人と人。自分の中では基準があって、やはりポジションごとに役割がある。その役割ができないと使わないし、役割を果たした上でプラスアルファがあるとさらに評価は上がる。その中で、僕は出られない選手が重要だと思っている。出られる選手はモチベーションを高く保てる。残念ながら3番手4番手の選手でも、私自身は信頼しているというところを見せたい。そういう選手に対しては、何がよくて何が足りないと努めて声を掛けるようにしている。課題を明確に与えると、より高いレベルで競争が生まれる。

 -シーズン中はいいとき悪いときの波もあると思う。
 まずはチームの勝つ確率を上げるサッカーを構築することが重要。周りに流されず、やっている選手たちが自信を持てるようなサッカーを追求する。うまくいかないときに何ができるかは自分の力量。

 -昨年のような過密日程ではない。起用法は。
 リカバリーの時間は十分にあるので、基本的にはその日のベストが出る。ただ、チーム内や相手に(新型コロナの)陽性者が出れば当然連戦も考えられる。誰が出てもやれる準備を引き続きやる。

 -最後に読者へのメッセージを。
 今年のスローガンは「全力で光れ」。僕は非常に気に入っている。まず自分たちが輝いて、強くなっておもしろいサッカーをして、次も見に行こうと思えるようなサッカーをして。その姿を見てサポーターたちが希望や勇気を持ってもらえるのが理想。皆さんの光になれるように、チーム一丸でやっていきたい。

 【略歴】よしだ・たかゆき 兵庫県出身。現役時代はFW。横浜フリューゲルスの消滅前最後の試合となった1999年元日の天皇杯決勝で逆転ゴールを決めて優勝し、ヴィッセル神戸に在籍した2013年は現役最終戦で得点を挙げるなど「記憶に残る」プレーは数多い。神戸で指導者生活を始めてコーチ、ヘッドコーチを歴任。17年8月~18年9月、19年4~6月に監督として神戸を率いた。20年1月にV長崎のコーチに就任。21年1月、監督に昇格した。


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