元寇船の大型木材 新技術での保存処理終了 松浦・鷹島

トレハロースを使い保存処理された長さ約5メートル、重さ400キロの元寇船の隔壁板=松浦市埋蔵文化財センター

 琉球大の池田榮史(よしふみ)教授を研究代表者とする「蒙古襲来(元寇)沈没船の保存・活用に関する学際研究」で、2019年8月から松浦市鷹島町の市埋蔵文化財センターで進めていたトレハロース(糖類)を使った新技術による元寇(げんこう)船の隔壁板(船内の仕切り板)の保存処理が終了。13日、含浸槽からの取り上げ作業が公開された。
 海底から出土したくぎなどの金属を含んだ木材は、従来のポリエチレングリコール(PEG)を用いた保存処理では空気中の水分などで金属の腐食が進み、ゆがみや変色などの傷みを食い止められなかった。
 市と同研究グループは埋蔵文化財の保存処理の調査、研究をしている大阪市文化財協会の伊藤幸司さん(59)と連携。PEGより分子が小さく、木材への浸透性の高いトレハロースを保存剤とした世界初の技術と、太陽熱で作った温水を循環させて含浸槽の温度を制御する処理装置を開発。02年に鷹島沖から引き揚げた長さ約5メートルと約3メートルの隔壁板を保存処理していた。
 取り上げ作業は市文化財課の職員や、石川県など県外から参加したトレハロース含浸処理法研究会のメンバーら約20人が担当。トレハロース濃度70%溶液を80度までに温めた含浸槽(長さ6.5メートル、幅1.5メートル)から重さ約150キロ~約400キロの隔壁板をクレーンなどで慎重に取り上げた。隔壁板は年内にかけて乾燥させるという。
 伊藤さんは「大型の木材がPEGの3分の1の期間で保存処理できた。将来の元寇船の船体引き揚げにつながる成果だ」と話した。

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