【#これから私は】東日本大震災がテーマの短編映画「漂流ポスト」、横浜で上映始まる 監督「震災の教訓、もう一度思い出して」

「人を思う心を大切にする映画を作りたかった。震災の教訓を思い出すためにも、横浜の人にぜひ見てほしい」と話す清水さん=横浜市中区

 東日本大震災で親友を失った女性の葛藤を描いた短編映画「漂流ポスト」の上映が20日、横浜市中区の「シネマ・ジャック&ベティ」で始まった。

 監督は同市金沢区出身の清水健斗さん(37)。“心の蘇生”をテーマにした本作は、海外の映画祭でも相次いで受賞し、清水さんは「震災から10年、親しい人を突然失う悲しみに思いをはせてほしい」と作品に込めた思いを語る。

 2011年3月11日を「人ごととは思えなかった」と、清水さんは振り返る。

 CM制作のため何度も東北沿岸部に通っていたからだ。世話になった現地の人と連絡が取れたのは1週間後。何か役に立ちたいと5月から長期ボランティアに参加し、避難所での炊き出しなどを手伝った。

 本作は17年に製作。震災後も、ボランティアで見た景色が忘れられなかった。時がたつにつれ「風化を防ぎたい」との思いを強くし、脚本を練り始めた。題材を探す中、テレビのドキュメンタリー番組で亡くなった人へ手紙を出す「漂流ポスト」が岩手県陸前高田市にあると知り、現地で取材を重ねた。

 「どの手紙にも相手を思う素直な気持ちが書いてあり、胸が詰まった」と清水さん。劇中では、リアルな表情を大切にしようと、俳優が漂流ポストに届いた手紙を初めて読む姿をそのまま使うなど、撮影シーンにこだわった。

 18年から海外の映画祭でも上映され、フランスのニース国際映画祭では「最優秀外国語短編映画グランプリ」を受賞。多くの人がテロやコロナ禍でかけがえのない人を失った欧州でも作品は高い共感を呼んだ。

 震災から10年の節目、横浜でも上映が決定。清水さんは「この作品が東北から離れた横浜でも、もう一度、震災の教訓を思い出すきっかけになってくれればうれしい」と話している。

 4月2日まで。問い合わせは、シネマ・ジャック&ベティ電話045(243)9800。

© 株式会社神奈川新聞社