「家計まで気が回らない」多忙な人にオススメのピンポイント家計把握

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は37歳、会社員の女性。共働きで6歳のお子さんを持つ相談者。毎日忙殺され、家計まで気が回らないのが悩みです。教育費や老後資金のために家計を見直したいといいますが、多忙な共働き夫婦にオススメの家計管理法は? FPの横山光昭氏がお答えします。

夫婦共働きです。小1の子どもの学童の帰り時間に合わせて帰宅できるよう、慌ただしく仕事をし、朝もバタバタしているので家計にまで気を回すことができていません。そのため、収支の状況もよくわからなくなっています。

家計簿も長続きしませんし、使途不明金がかなりあります。収入で生活費が足りているのかもよくわからないのですが、貯金を切り崩して生活費に充てることもあるので、恐らく赤字が多いのではないかと思っています。

先日、相続の関係で300万円の臨時収入があったのですが、クレジットカードの分割払いなどを清算すると150万円まで減ってしまいました。このことからも、お金を使いすぎていることを実感しました。

住宅は、将来的に今住んでいる家を親から相続することになるので心配はありません。住居はあるし、毎月困ることがなく暮らしてこられたので、今まであまり貯金などについて意識もしてきませんでしたが、今後は子どもの教育費のこともありますし、自分たちの老後の準備もしていかなくてはいけないと思っています。なんとか我が家に合った家計管理の仕方を身に着け、貯めていけるようになりたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、37歳、会社員

・夫、40歳、自営業。長男、6歳、保育園年長

・手取り収入:相談者:21万3,000円、夫25万5,000円

・年間ボーナス:相談者約60万円

・貯金額:150万円

・毎月の支出の内訳:50万6,000円

【毎月の支出の内訳】(生活感覚で概算)

住居費(管理費):0円

食費:9万円

水道光熱費:4万2,000円

通信費:2万4,000円

生命保険料:1万8,000 円

学資保険(2つ):4万9,000円

日用品代:1万円

医療費:1,000 円

教育費:4万3,000 円

交通費:1万8,000円

被服費 :4万円

交際費:2万円

娯楽費:3万円

夫こづかい:5万円

その他:4万1,000円(このうち化粧品代が約2万円)

住民税:3万円


横山:お忙しくて、家計管理ができていないのですね。生活している中の感覚で支出状況を伺いましたが、大まかに書き出してみても収入より支出が多いことが分かります。今のままだと、ご相談者のボーナスは赤字補てんでほぼなくなってしまうでしょうし、夫の自営業が今のままを維持できる、または今より良くなれば良いですが、状況が変わってしまう可能性もゼロではありません。また、クレジットカードを赤字の補てんに使っているのではないかと思えますし、分割払いで多用している様子も気になります。毎月の収支を見直し、貯金が作れ、かつ多少の収入の増減にも揺るがない家計を作るようにしたいものです。

支出ひとつずつの必要性を吟味

伺った支出は、全体的にメタボになっています。もう少し細かく把握し、必要な支出と必要ではない支出とに分けてみましょう。

固定費は契約内容と使い方を照らし合わせ、使い方に見合った料金を負担していると思えるかを検討してみましょう。利用の仕方に合わないような高い金額を払っていると思うのなら、契約内容を見直すことをお勧めします。該当するのは、通信費。特にスマホの使い方と料金負担について検討してみましょう。最近は大手キャリアも格安プランを出していますから、選択肢が増えています。固定費の中の保険料については、後述します。

費目を絞って記録するのもよし

変動費も支出が多い費目が複数あります。一度全体的に支出状況の記録ができるとよいのですが、普段も家計簿は続かないとおっしゃられていますから、負担が少ない記録方法を考えてみましょう。お勧めするのは、支出の内訳を知りたい費目に絞って記録をすること。ご相談者の場合は、食費、交際費、被服費、その他に入っている化粧品代などに絞って記録してみるとよいでしょう。

支出の内容が見えると、不要な支出も見えてきます。無理に支出をカットするのではなく、家族にとって必要と思える支出は残し、なくてもよいと思える支出をカットするだけでも、総額は削減されてくるでしょう。すると、クレジットカードの利用も減ってくるかもしれません。

妻もこづかい制導入の検討を

ところで、気になるのは変動費の中の「化粧品代」です。必要かどうかを見極めていくやり方でもよいのですが、妻(ご相談者)もこづかい制とし、その中でやりくりをしていくというやり方に変更してもよいと思います。

現状、妻(ご相談者)の支出は家計の中にちりばめられています。こづかいをもらうなんて気が引けるという方もいるのですが、そう言って妻の支出をブラックボックス化してしまうと、貯金はいつまでたってもできません。例えば、化粧品に毎月お金がかかりがちでも、こづかいがあれば、「今月はこれを買って、これは来月に」という具合に、毎月決まった枠の中で納めることができるようになるでしょう。

こづかいの金額は、こづかいで負担するものをどのように設定するかなどで決めていくとよいと思いますが、無理に低い金額にしても意味がありません。必要なものを買うのに過剰すぎず、少なすぎない金額を検討してみましょう。

学資保険を見直して

固定費の中でも保険料はかなり大きい負担ではないかと思います。47万円弱の収入約14%が、生命保険料と学資保険料です。生命保険のほうはご家族に必要な保障があるかどうかを見直してほしいのですが、学資保険についてはその目的をしっかり考えてほしいと思います。

昔は「教育費を貯めるには学資保険」が当たり前で、子どもがいるご家庭の多くが学資保険を利用していたと思います。ですが今は低金利の時代。昔の学資保険のようには貯まらなくなってしまいました。ですから学資保険を「貯める」目的で利用することはお勧めできないのです。貯めたいのなら、もっと効率的な仕組みを活用検討しましょう。

教育費を貯めるには貯金、投資などの方法がありますが、教育費の場合はどちらか一方に偏ってはいけません。3〜5年程度のうちに必要になる教育費は預貯金で、それ以上先になる教育費は投資で貯めてもよいのですが、お金が必要になる時期に相場が悪くなっている可能性があることも考慮して、まず貯金で優先的に作り、先を見通した時に不足すると思われる金額を投資で作るなど、併用していくとよいと思います。

貯める、投資をするにも、まずは家計の黒字化と貯金ができる運営が大切です。赤字の時に保険で貯めるというのは本末転倒。まずは家計を正常化し、その次に貯めることを考えていきましょう。

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