アスレチックスの開幕投手は苦労人・バシット 昨季防御率3位

日本時間3月26日、アスレチックスのボブ・メルビン監督はクリス・バシットが今季の開幕投手を務めることを発表した。先週からしばしば「開幕投手は誰?」と記者に質問されてきたメルビンはこの日、「開幕投手が誰なのか知りたいかい?」と自ら切り出し、数秒の間をおいて「クリス・バシットだ」と公表。トミー・ジョン手術を乗り越え、30歳になってからメジャー定着を果たした苦労人がキャリア初の大役を務めることになった。

現在32歳のバシットは昨季11試合に先発して63イニングを投げ、5勝2敗、防御率2.29(リーグ3位)、55奪三振を記録。9月の4先発で3勝0敗、防御率0.34の好成績をマークして月間MVPを初受賞し、サイ・ヤング賞の投票では10ポイントを獲得して8位にランクインした。今年のオープン戦でもここまで3試合に先発して2勝0敗、防御率1.74と好投を続けている。

先発ローテーションの中心的存在へと成長したバシットだが、そこに至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。2011年のドラフトでホワイトソックスから16巡目指名を受けてプロ入りし、2014年にメジャーデビューを果たしたものの、同年12月にジェフ・サマージャらとのトレードでアスレチックスへ移籍。2015年は86イニングで防御率3.56と好投しながらも1勝8敗と勝ち星に恵まれず、2016年には右肘を痛めてトミー・ジョン手術を受けた。リハビリ中には「もうメジャーで最後のボールを投げ終えてしまったのかもしれない」と思ったこともあったという。

しかし、2018年にメジャー復帰を果たして2勝を挙げると、翌2019年には自己最多の144イニングを投げて自身初の2ケタ勝利(10勝)をマーク。そして、昨季はリーグ3位の防御率を記録する大ブレイクを遂げた。「トミー・ジョン手術後には復帰できるか疑問に思ったこともあった」とバシット。そうした経験もあり、「ロースターにいられることを当然だと思ったりはしない。メジャーに居続けることがどんなに大変か知っているからね」と決して慢心することはない。

なお、アスレチックスでは2001年から2006年にかけてティム・ハドソン、マーク・マルダー、バリー・ジートの「ビッグ3」が開幕投手を独占していたが、それ以降の15年間ではバシットが13人目の開幕投手となる。2年連続で大役を担ったのはソニー・グレイ(2014~15年:現レッズ)とケンドール・グレイブマン(2017~18年:現マリナーズ)の2人だけである。

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