1─0の九回1死三塁。一打同点のピンチに立ってから、東海大相模ベンチは立て続けに2度の伝令を送った。
「スクイズは怖くない」「最後の最後まで攻めていけ」
マウンドに走った背番号5の小林の言葉にエース左腕石田が奮い立つ。「(先発の求が)つないでくれたので、攻める気持ちを忘れずに腕を振った」と気迫の直球で2者連続の空振り三振。両拳を握って雄たけびを上げた。
最少得点差のしびれる零封リレー。昨夏の交流試合を含め、甲子園で春夏12度目の指揮を執る門馬敬治監督(51)にとっても初めてのことだ。初戦に続き、大胆な投手起用が的中している。
4回無失点の2年生求は公式戦初先発。「石田さんだけでは勝てないことを秋に思い知った。自分ができることを全力でやる」と起用に応えた。
序盤の先制後、試合が膠着(こうちゃく)するとみるや、五回から石田を投入。守りでも先手を取る攻撃的な采配で逃げ切りに成功した。
昨年のコロナ禍で活動休止を余儀なくされ、特に下級生は思い通りにチームへ順応できなかった。指揮官は「夏の大会後、新しい発見がなかった」と突き放し、石田以外の投手陣の底上げを促してきた。
大会前、門馬監督が「誰かが頑張るんじゃなくて、誰もが頑張る」と話していた理想に一歩近づく戦いぶり。もうエース一人のチームじゃない。緊迫した投手戦が何よりの証だった。