【#これから私は】「つなぐっぺし」大震災に節目ない 被災地に足運び、思いつなぐ若者たち

石巻で1年2カ月暮らした長谷川さん。新聞集金の仕事も担い、多くの住民たちと言葉を交わした=宮城県石巻市(長谷川さん提供)

 「前向きに頑張る」を意味する宮城・三陸地方の方言「がんばっぺし」と、「記憶と人をつなぐ」との意味を掛けた「3.11つなぐっぺし」の歩みに節目はない。現役の中高生や卒業後もサポートする大学生、社会人らが活動に込めてきた思いとこれからを追った。

 「3.11だけじゃない。いろんな人にそれぞれの命日がある。あの日の後にこそ、たくさんの人が大変な思いをしてきた」

 東日本大震災から11年目を迎えた今、長谷川梨央さん(22)=横浜市戸塚区=はこの思いをかみしめる。東北で過ごした日々がくれた実感だ。

 中学3年生だった2013年、地元の逗子市から東北へ通い始めた。初めてボランティアバスツアーで訪れた岩手県陸前高田市で、泥に埋もれた日常の痕跡、住宅が姿を消した野原、被災地の人の思いに触れた。「忘れず伝えたい。できることがしたい」。現地で思いを抱いた逗子・葉山の中高生で立ち上げた団体が「3.11つなぐっぺし」だ。被災地に足を運び、震災と防災について地元で伝え続けた活動を経て、東北で暮らし、働いた。

 3.11から10年の“節目”が過ぎて2週間余り…。テレビや新聞、インターネットの報道特集も減っていった。

 横浜に戻り、教育や福祉の仕事に携わってからも、思い出すのは地域の人とともに暮らした宮城県石巻市の光景だ。津波が15キロ上流までさかのぼった北上川。広大な田んぼにそびえ立つ山。畑や牛舎。古くて温かい商店…。

 「石巻の野菜おいしかったな、お裾分けしてもらったな、って浮かんでくる」。大切な思い出を胸に、改めて思う。「誰もがいつ被災するか分からない。3月11日だけじゃなく、自分なりに日常の中で考えていきたい」

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