コロナ禍でも「朝陽は、また昇る」 102歳の画家、井上さん 挑戦の個展

出品作「朝陽は、また昇る」と井上寛子さん=横浜市神奈川区

 102歳で絵筆をとり続ける横浜の女性画家が4月3日から18日まで、東京・世田谷の画廊「ギャラリーアッカ」で個展を開く。長引くコロナ禍も「私には、ほかに生きる道はない」と描き続ける日々。出品作の仕上げに力を込め、さらなる高みを目指している。

 横浜市神奈川区中丸の井上寛子さん。夫は神奈川県庁や横浜駅に作品が展示されている彫刻家の井上信道さん=2008年死去。娘の大野静子さんも現代アート作家という芸術家一家だ。

 寛子さんは1918年生まれ。第二次大戦中の横浜大空襲では、夫が焼夷(しょうい)弾で右半身やけどを負い、身重の体で看病を続けた。2カ月後には静子さんを出産するという経験もした。戦後も夫婦で創作活動にあたってきた。

 コロナ禍の今も毎日、自宅アトリエでキャンバスに向かう。時には1人でバスに乗って画材を買いに出かける。今回の個展に向けても、絵に合う額縁がないと自身でのこぎりを出し、木を切って準備した。

 個展は100歳の2018年に開いて以来で、12月に103歳の誕生日を迎えることから「103歳の挑戦」と名付けた。

 出品作は35点ほど。新作の「朝陽は、また昇る」は、半分は鏡のように、半分は黒く光る太陽が昇る姿を描いた。非常時の今も「停滞している事態に動きを求めた」と思いを語る。

 また、旧作では、40年ほど前に描いた自画像をあらためてバランスを見直し、顔だけ切り取って額装、展示する。

 詳細はギャラリーアッカのホームページで。

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