雇用関連制度改正 70歳就業対応3割、同一労働同一賃金は半数以上【長崎経済アンケ】

雇用関連制度改正、県内企業の対応

 十八親和銀行系シンクタンク、長崎経済研究所(長崎市)は4月の雇用関連制度改正について県内主要企業にアンケート。70歳就業の努力義務化に対応しているのは3割にとどまり、同一労働同一賃金には半数以上が対応(準備中含む)している。
 法改正により4月から、70歳まで働ける環境整備が企業の努力義務となる。正規と非正規の労働者間の不合理な待遇格差を禁じる同一労働同一賃金は、中小企業にも適用される。アンケートは2月18日~3月1日、ウェブで113社が回答した(回答率37%)。
 70歳就業について「既に対応している」と回答したのは31%。ある運輸業は健康や勤務態度に問題がなければ1年ごとに契約を延長しており、農業団体は年齢による定年を廃止した。「これから整備・検討する」は30%、「現時点では検討に着手していない」は29%。理由として、体力面の不安や罰則のない努力義務である点などが挙がった。
 70歳就業を受け入れる場合にどのような雇用形態を想定しているかを尋ねると、再雇用延長が42%で最多。再雇用した上での短期間勤務が35%で続いた。定年延長や定年廃止はどちらも2%程度だった。
 一方、同一労働同一賃金は「既に対応済み」29%、「現在対応中」27%、「これから対応する予定」22%。未対応の企業からは「能力との兼ね合いが難しい」(サービス業)「同一労働の判定基準が不明確」(卸売業)などの意見が寄せられた。
 このうち「既に対応済み」または「現在対応中」とした計63社に従業員の処遇改善策を質問。「正社員、非正規社員とも全体を見直した」が25%、「非正規社員を引き上げた」が29%をそれぞれ占めた。具体的には賃金や手当、福利厚生の拡充のほか、アルバイトからの契約社員への変更、アルバイトへの交通費同額支給などを行っていた。「正社員を引き下げた」という企業はなかった。「変更しない」と答えたのは30%で、「まずは業務内容や責任の範囲を見直す」(卸売業)といった声があった。
 回答した全113社のうち、人件費への影響について「ある程度上昇する」としたのは46%に達した。「変わらない」は35%だった。
 同研究所の泉猛主任研究員は「新型コロナウイルス禍が長期化し厳しい経営環境だが、働く環境全体を見直し、これまで以上に労働生産性を高めていくことが企業に求められている」としている。

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