春風をもたらすよう

 春の便りを聞く頃に、いくらかホッとするような話題が届いた。その一つに、ハウステンボスで11年ぶりに新エリアができたというニュースがある。美しいデジタル映像で、花園や海や森などの世界を体験できるという▲平戸城も大改修が終わり、本丸では平戸の歴史が分かるデジタル映像が流されている。この時期の「装い一新」の知らせは、とかく「苦境」の一言で語られる本県観光に清新な風を吹き込むようでもある▲これもまた、観光、旅行業界に吹く春風になるかどうか。県は、旅行の割引キャンペーンの第2弾をきのう始めた。県民が県内旅行をすれば、1人1泊当たり宿泊代金の50%(上限は5千円)を割り引く▲3月上旬の第1弾は初日から申し込みが殺到した。今回も人気なのだろう。宿泊のネット予約はずいぶん埋まっていると、きのう身近に聞いた▲旅心とはいつの世も不変らしい。700年ほど前に書かれた「徒然草」十五段にある。〈しばし旅だちたるこそ、目さむる心地すれ〉。旅に出ていると、目の覚めるような新鮮な心地になるものだ、と▲県民が、県内の観光資源の魅力をあらためて知る。それこそ「目さむる心地」に違いないが、いま県内でも感染が急拡大している。しみじみとした旅心に細心の注意を添えて、春風をもたらしたい。(徹)

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