阪神164発ペース! コツコツ虎打線を激変させた “三振王” 佐藤輝+“マン振り改革”

バットを折られながらも猛スイングで内野安打を稼いだ阪神・佐藤輝(中)

この勢いは本物か。首位を快走する阪神が、20日の巨人戦(東京ドーム)に10―5で大勝し、7年ぶりの8連勝で貯金を「12」とした。敵地・東京ドームで5本塁打の乱れ打ち。これで2位・巨人とのゲーム差は「4」となったが、チーム本塁打数「23」も堂々の12球団トップを走っている。近年、長打力不足に悩んできたはずの阪神に今、何が起きているのか? その背景には、あの規格外ルーキーがもたらした〝波及効果〟があった――。

ゲームは序盤3回までに5点をリードする楽勝モードの展開。だが先発したエース・西勇がまさかの5回4失点と崩れ、一時は1点差にまで詰め寄られた。

舞台は昨季、3勝9敗と散々苦しめられた鬼門・東京ドーム。だが、そんな嫌な雰囲気を一掃したのが、6回のサンズの6号ソロ、7回の梅野の2点適時打、そして9回の大山のこの日2発目となる3号2ランだった。

効果的に中押し点、ダメ押し点を奪い、後続の救援投手陣もG打線をほぼ完璧に封じ込めた。チーム一丸の試合展開で今季東京ドーム初戦を勝ち取った矢野監督は「東京ドームの最初の試合ということで、なんとしても勝ちたかった。ウチの野球ができた。皆がノッていける。空中戦をやりたいわけじゃないけどさ」と、冗談を交えながらも手応えを口にした。

それにしても例年にない勢いで本塁打を量産する2021年の阪神打線。シーズン164発ペースは、本拠地・甲子園球場からラッキーゾーンを撤廃した1992年以降としては、史上2位(1位は2010年の173本塁打)となる好調ぶりだ。

国内屈指の「ホームランが出にくい球場」甲子園を本拠地とする阪神打撃陣は、一発をある程度あきらめ、シュアなバッティングに重きを置くチーム編成を意識せざるを得なかった。だが、そんな流れを打破するため、矢野政権では井上一樹ヘッドコーチ(49)を中心に、ここまで辛抱強く「マン振り改革」を断行。「ええやん三振しても。強く振ってこい。小さくなるな」と繰り返しナインたちに説いてきたことが今、ようやく形になって表れてきた格好だ。

そして、今季はその方針を大きく後押ししてくれる選手がチームにいる。この日の試合後、井上ヘッドはドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手(22)の名を挙げ「テルがあれだけ三振しながら強く振ってるってのはチームの皆が見ているわけで『俺らも振ろうぜ』という気持ちにさせてくれるのかなとも思う」と〝佐藤輝効果〟についても言及した。ここまでリーグダントツ33三振を記録しながら、頑なに自身の身上であるフルスイングを貫く黄金ルーキーの姿は「マン振り改革」を体現し、ナインを無意識のうちに鼓舞してくれているとの見解だ。

一方、この日の一戦を見た本紙評論家の伊勢孝夫氏も「巨人ベンチはちょっと佐藤輝を意識しすぎとるんちゃうかな、とは思えた。結果的に彼以外の打者へのマークが緩くなったことで、マルテ、大山、サンズには一発を許し、(7番の)梅野には適時打を浴びた。打線の中に佐藤輝がいることが敵味方問わず様々な影響を与えているわな」と、背番号8の存在感の大きさを認める。

すでに貯金は12。残り123試合を勝率5割で乗り切ったとしても優勝ラインは見えてくる。破竹の勢いでVロードを疾走する猛虎打線の上昇ムードはいつまで続くのか――。

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