読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2人の子どもの中学受験をサポートするために、仕事を辞めようと考えている44歳の主婦。妻の収入がなくなっても生活していけるか知りたいといいます。FPの三澤恭子氏がお答えします。
現在、共働きで収入を得ています。これまでできる限り貯金をし、先月住宅ローンを完済しました。そのため、現在貯金は300万円程度です。
第1子の中学受験を考えて、サポートのために2020年12月で退職を考えています。第2子が中学入学までは専業主婦として、子どもの受験を支えたいと思っています。これまでの貯金ペースなら退職までに約1000万円貯まる見込みです。第2子が中学入学後はもう一度どこかに再就職するつもりです。
ただ、第2子が中学受験するまで私の収入がなくなるため、生活していけるのか心配です。老後の貯蓄がないのですが、子どもが自立してからでも間に合うでしょうか。万が一の時の保険に夫婦ともに加入しておらず、その点も気になっております。
学資保険は全払いしており、18歳時に2人とも300万円受け取れるようにしています。また、夫の個人年金も全払い済みで60歳から10年間支払われる予定です。ご指導よろしくお願いいたします。
〈相談者プロフィール〉
・女性、44歳、既婚(夫:48歳、会社員)
・子ども2人:10歳、8歳
・職業:看護師
・居住形態:持ち家(戸建て)
・毎月の手取り金額:65万円
(夫:35万円、妻:30万円)
・年間の手取りボーナス額:180万円
(夫:100万円、妻:80万円)
・毎月の世帯の支出目安:30万円ほど
【支出の内訳】
・住居費:なし
・食費:6万円
・水道光熱費:2.5万円
・教育費:13万円
(給食費、塾代、習い事費など)
・生命保険料:1万円
(医療保険、夫婦合算)
・通信費:2万円
・車両費:1万円(ガソリン代)
・お小遣い:5万円(夫婦合わせて)
※年間でかかる支出:21万円(固定資産税や自動車税など)
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:35万円、児童手当2万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:180万円
・現在の貯蓄総額:300万円
・現在の投資総額:なし
・現在の負債総額:なし
三澤:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの三澤恭子です。すでに住宅ローンも完済されたとのこと。目標に向かってしっかりと家計管理をされてきた様子がうかがえます。そして、来年からは本格的に2人のお子さんの中学受験を支えたいとのことですね。
相談者様の手取り年収440万円(手取り月収30万円×12ヵ月+ボーナス80万円)がなくなると、貯蓄はできなくなりますが、「生活していけるのか」という心配はないように思われます。専業主婦になっても家計が成り立つのか一緒にみていきましょう。
塾代は「いくらかかる」ではなく「いくらまでにするのか」を明確に
文部科学省の統計によると、公立小学校の学校外活動費(塾代など)を含めた教育費は年間約32万円。お子さん2人で約64万円(約5.3万円/月)です。
教育費のかけ方は各ご家庭で異なりますので、相談者様が心配されている専業主婦になってからも生活が成り立つのか、前提条件にそって中学受験までにかかる教育費を試算してみましょう。
【中学受験を終えるまでにかかる2人の教育費】
試算によると、第1子・第2子ともに中学受験の一年間は400万円前後の教育費がかかります。年間収支は赤字となりますが、退職までに貯めた約800万円の貯蓄が支えとなり、お子さん2人の中学受験は無事に乗り切れます。
お子さん2人にかける塾代や習い事費がトータルでいくら位かかるのか、家計から捻出できる塾代の上限をいくらまでとするかなど、今から明確に予算立てしておくことをおすすめします。
次に受験後の収支をみていきましょう。
【中学入学より3ヵ月後から再就職した場合】
中学受験が終わり再就職した場合、第1子の大学入学までに学資保険300万円を含め2500万円の貯蓄ができます。
相談者様のご家庭は、住居費の負担がなく基本生活費もコンパクトにされていることから収支に余裕があります。老後資金は子どもが自立してからというより、相談者様が再就職されたら少額からでも運用を始めてみてはいかがでしょう(何歳を子どもの自立の時期と考えるかにもよりますが、もし大学卒業だとしたら親は現役で働ける時間がありません)。
住宅ローンも完済されているので、掛け金全額が所得控除となり、所得税・住民税の負担が軽減されるiDeCoの利用を検討されたらいいと思います。
国の保険は強い味方、遺族年金を確認し不足は生命保険でリスクヘッジ
最後に子育て時期の死亡保障について考えてみましょう。
お子さん2人の受験をサポートしている間に、ご主人に万一の事があったら収入が途絶えてしまいます。2人が大学院を卒業するまでに約4000万円の教育費がかかりそうです。今までと同じ生活を送るためには、残された家族の生活費や教育費の確保が必要になります。
まずは、公的保険である遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)や会社からの死亡退職金、弔慰金などを確認しましょう。その上で足りないとなれば生命保険でリスクヘッジしておきましょう。貯蓄が積みあがるまでは、ご夫婦ともに会社の団体保険や収入保障保険など死亡保険に加入しておくと安心です。
残された家族が受け取ることができる遺族年金は「日本年金機構のホームページ」や「ねんきん定期便」で必ず確認しておきましょう。