出産で退職、世帯収入減。贅沢はしていないのに毎月赤字に…

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、出産のために退職し、子育てをしながら保活・就職活動中の女性。世帯収入減で赤字の家計をどう立て直していけばいいのかというご相談に、FPの横山光昭氏がお答えします。

贅沢しているつもりはないのに、毎月の生活費が30万円を超えてしまいます。そのため、毎月3万円を超える赤字が出ており、このままでは家計破綻も近いのではないかと不安です。

今までは共働きでしたが、第2子を出産する時の職場が育児休業を取りにくい環境であったため、仲間に迷惑をかけてはいけないと思い、退職しました。世帯収入が減るので、支出を減らすよう意識して暮らそうと考えてきましたが、家事・育児に追われて思うように節約ができません。

下の子がもう少しで1歳になるので、再就職をして収入不足を解消しようと思っています。が、子ども2人の預け先がなかなか見つかりませんし、保育園事情に合わせてくださる就職先も見つかりません。また、うまく預けて働けても、保育料を払うと収入が生活費に回せるほど残せるのかも不安です。

ただ、早いうちに家計を立て直しておかないと、いずれ借金をして暮らすようになるのではないかと最悪のことを考えてしまいます。家計を立て直すために、どのように取り組んでいくことが良いのでしょうか。

<相談者プロフィール>

・相談者:35歳、女性、既婚

・職業:専業主婦(求職中)

・同居家族:夫(32歳、会社員)

・子ども:3人(長女2歳、次女0歳)

・毎月の手取り金額:26.8万円(夫)

・年間の手取りボーナス額:約50万円(夫)

・貯金:200万円

・毎月の世帯の支出目安:35.5万円

【支出の内訳(30.4万円)】

・住居費:4万円(社宅)

・食費:7.2万円

・水道光熱費:1.8万円

・通信費:2.6万円(スマホ2台、タブレット2台、インターネット回線)

・日用品代:2万円

・車両費:1.3万円

・医療費:1.2万円

・被服費:1万円

・教育費:2.1万円(幼児教育)

・生命保険料:1.8万円

・小遣い:1万円(夫)

・その他:4.4万円


横山:ご出産に伴い、収入が減ったり、支出が思うようにコントロールできないということを経験されているご家庭は多いものです。特に育児をしながら家計を管理するとなると、目を行き渡らせるゆとりがない時も多いでしょうから、なおのことコントロールすることが難しい場合もあると思います。お子さんが大きくなってくると少しずつ解消されるのでしょうが、コントロールできない状態がクセになり、長期間継続することがないように、改善できるところから取り組みをしていきましょう。

お金を残す家計づくりに大切な3つのこと

家計は「収入」「支出」で成り立っています。この収支のバランスにより、赤字になったり、蓄えがしっかり残せたりします。この収支のバランスを取り、お金を残すために大切なことは、

(1)収入を増やす
(2)支出をコントロールする

まずはこの2つです。そして、将来に向けお金を蓄えるために

(3)資産形成をする(貯める、運用する)

ことも大切です。

家計の準備なしに(3)の資産形成に取り組むことはできないので、まずは(1)の収入を増やす、(2)の支出をコントロールするところから始めます。

では、どちらから取り組み始めることが可能でしょうか。相談者さんは収入を増やすことに取り組みたいと考えていますが、今はまだ実現できる目処がしっかり立っていません。ですから、支出をコントロールするところから始めると良いでしょう。

贅沢はしていないとおっしゃいますが、支出状況を拝見すると、支出の仕方を見直せば減らせそうな部分がいくつかあります。必要な支出を無理に削減する必要はなく、必要度の低い支出を減らす、削減していけば良いのです。無理だ、難しいと先入観を持つのではなく、暮らしに必要なものを選別していくと考え、支出の振り返りをしてみましょう。

支出の振り返りのコツ

日頃家計簿をつけているなら、それに基づいて月に1度、支出1つずつについて振り返ってみましょう。生活に必要な「消費」と判断できる支出なのか、単なる無駄遣いと思える「浪費」なのか、将来につながる勉強、蓄えそのものとなる「投資」と言える支出なのか。その判断は相談者さんのご家庭の暮らし方や価値観、考え方によるものですから、ご主人と話し合って判断すると良いと思います。

そうすることで、徐々に自分の家計がどういう支出が多く、「消費・浪費・投資」のどういう要素を多く持っているのかなど、特徴が見えてきます。すると、どこを改善するとお金が残るのかも見えてくるのです。

もし、家計簿をつけてない場合は、買い物をするごとにレシートを「消費」「浪費」「投資」に分けた箱や袋に入れ、あとで集計してみると良いでしょう。

すると、例えば「食費が72000円かかっているけれど、外食と惣菜が多かったから、自炊を増やしてみよう」と行動を変えることができれば、支出の削減が期待できます。また、お子さんが小さい時にかかりがちなおむつなどの消耗品代についても支出の工夫が見えてくるかもしれません。

こういった振り返りが習慣化できると、「スマホとタブレット、両方とも通信の契約が必要か」と考えるようになるかもしれません。もし用途がお子さんの動画視聴が主になるようであれば、1台は通信契約を無しにして自宅ネット回線を利用すると考えることもできます。スマホも使い方によっては「通話が多いからキャリア利用がいい」「通話は少ないけれど、繋がりが良い方が良いから、準キャリアで」「こだわらないし通話も少ないから格安業者で」などと、契約の仕方を選ぶことができます。そうすると、不満なく、利用料を下げるということができるかもしれません。

保育料は3歳以降負担が軽くなる

お子さんにかかる費用は、今は3歳未満なので保育料無償化の対象ではありません。ですが、3歳を超え5歳までは利用料が無料となります。給食費や送迎費などの実費はかかりますが、負担はかなり軽減されます。

復職後、二人分の保育料がかかる時期は大変でしょうが、上のお子さんは3歳になった後の4月から無償化対象となりますから、負担が大きいのは数ヶ月です。

また、もし認可外保育園に預けることになっても3万7000円分は補助されますし、自治体独自の補助金が支給されることもあります。
参考:幼児教育・保育の無償化はじまります。

支出をコントロールできた上で収入を増やすことができれば、家計にしっかりお金を残せます。一時的に支出が多くなること、収入が減ることは、生きていく上で何度も起こることですが、それでも支出のコトントロールができていれば困ることは少ないでしょう。また、支出のコントロールが難しい時は、その分を、少し働いて収入を得て補うと考えても良いのです。こういうことが、一生物の貯金力になっていきます。無理だと思わず、できるところから始めてみましょう。

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