ねんきん定期便をチェックせず「放置」で起こりうる“3つの不都合なコト”

ねんきん定期便をチェックしていますか? 老後の収入の大部分を占めるものは何かというと、公的年金。にもかかわらず、受け取れる年金額をつかんでいない人が多いです。ファイナンシャルプランナーの高伊茂が、ねんきん定期便をチェックしていないと起こりうる“不都合なコト”と、”最低限チェックしたいコト”をご案内します。


毎年、ねんきん定期便が届いている

まず前提の話ですが、ねんきん定期便はいつ届くのでしょうか? 毎年誕生月にねんきん定期便が届くことになっていますが、1日生まれの人には誕生月の前月に届きます。

では、ねんきん定期便を見ていないと起こりうる“不都合なコト”を順に紹介していきましょう。

(1)将来受け取れる年金額が分からない

ねんきん定期便は、50歳未満の人と50歳以上の人とでは、記載されている年金見込額の内容が異なります。

50歳未満の人のねんきん定期便には、「これまでの加入実績に応じた見込額」が記載されています。一方、50歳以上の人のものは、「これから60歳まで今の収入が続いたら、65歳からこのくらいの額になる、という見込額」が記載されています。

逆にいうならこの部分をチェックしないと、将来受け取れる年金額が予想できません。

(2)年金記録が正しいかどうかが分からない

ねんきん定期便は、通常はがき形式で届きますが、35歳、45歳そして59歳のときには封書で送られてきます。この年齢を節目(ふしめ)年齢と言います。節目年齢のときに届くねんきん定期便には、過去の年金記録が載っています。

例えば、厚生年金の資格を取得した日、または喪失した日などの年金加入履歴、そして保険料をいくら納めたのかなどの保険料納付記録などです。

確率はかなり低いですが、年金加入履歴や保険料納付記録が、実際と異なる場合があります。

例えば月末に退職した場合は、厚生年金の資格を喪失した日が翌月1日になっていないといけません。もし月末に資格を喪失したことになっていたとしたら、その月は保険料を納めていなかったことになっているのです。あるいは、給料が30万円なのに20万円相当の保険料しか納付されていなかったとしたら……。

いずれも、あなたが将来受け取れるはずの年金額が少なくなっているということです。

(3)数々の特例を受けられないケースも

年金の制度は複雑です。知っていれば得すること、知らないと損することがいっぱいあります。代表的なものが長期加入の特例です。65歳になっていなくても、老齢厚生年金と定額部分(65歳からの老齢基礎年金に相当するもの)を受け取れるというものです。

この特例を受けるには3つの条件があります。

1.厚生年金の加入期間が528ヵ月以上あること
2.厚生年金から脱退していること
3.年金受給開始年齢になっていること

該当しそうな人が527ヵ月以内で会社を辞めてしまったとしたら、せっかくの特例を受けられなくなってしまいます。

ここだけはチェックしたい3つ

ここまでは不都合なコトを紹介してきました。ここからは「これだけはチェックしたい」という部分を紹介してきます。

(1)ねんきん定期便が届いているかどうか

わたしは国内各地で年金セミナーの講師を務めておりますが、「年金定期便を見たことがない」、「届いているかどうかも分からない」という人が結構います。

また、サラリーマンである夫のねんきん定期便は届いているが、妻のものは届いていないケースもあります、そのときには、会社経由で住所変更の手続きをしてください。なお、自営業の場合は、市区町村役場で確認してください。

(2)はがき形式のねんきん定期便が届いたとき

50歳以上の人は、少なくとも、「1.受給資格期間、2.受給開始年齢、3.年金見込額」をチェックしましょう。

1.受給資格期間
受給資格期間が120月以上になっていれば、老後の年金を受け取ることができます。また、老齢厚生年金を受け取っていた人が亡くなった場合の遺族年金は、年金加入期間が300ヵ月以上必要です。退職するまでに300ヵ月を満たすかどうかも確認しましょう。

もし60歳定年までに不足する場合は、300ヵ月をクリアする働き方を選ぶことをお勧めします。

2.受給開始年齢
受給開始年齢は原則として65歳からですが、生年月日や性別などによって65歳より前に受け取ることができる人がいます。

3.年金見込額
年金見込額は、60歳以降も厚生年金に加入しながら働けば、年金額が増えることになります。

(3)節目年齢で封書によりねんきん定期便が届いたとき

はがき形式では記載のなかった、全期間の年金加入履歴と保険料納付記録についても、内容をチェックしましょう。


以上、ねんきん定期便のチェックは基本的に1年に1回です。将来もらえる見込額を把握して、柔軟にライフプランを立てていきましょう。

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