共働き夫婦の誤算「産休・育休に入って家計が赤字に転落」貯蓄体質への立て直し方

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、34歳、会社員の女性。共働きで比較的余裕のある生活をしていた相談者。ところが、産休・育休に入ったら赤字に転落。家計のどこを見直せばよいでしょうか? FPの横山光昭氏がお答えします。

共働きの夫婦です。妻の私が産休、育休に入ってから、毎月の家計が赤字になってしまいました。夫のボーナスや貯金で赤字を補うので、貯金が増えませんし、むしろ減っています。今後に備えて何とか支出を抑えたいと思うのですが、どのように減らせばよいのかわかりません。

子どもが生まれるまでは、夫婦の手取りは合算して月に60万円ほどあり、比較的ゆとりがありました。欲しいものは何でも買って当たり前というような暮らし方をしてきたと思います。ですが、それでも毎月多少のお金は残り、黒字でやってこられました。

産休、育休で家にいるようになれば、自然に支出は減るだろうと思っていたのですが、新しい支出が増えたりし、なかなか減りません。家計簿をつけると支出が分かり、支出カットしやすいと聞いてつけてみたのですが、何も変化なしです。

復職すると、時短勤務になり給料は今の育児休業手当と同じほどか、それ以下になると思えますし、保育園の保育料の負担も増えます。さらに赤字が増えるのではないかと不安です。

何をどこから改善していけばよいでしょうか。

【相談者プロフィール】

・女性(34歳会社員、育児休業中)、夫(38歳会社員)、長男(7カ月)

・毎月の手取り収入:相談者21万3,000円(育児休業手当)、夫28万8,000円

・年間の手取りボーナス:夫約120万円

・貯金額:380万円

・毎月の支出の目安:56万2,000円

【支出状況】

住居費(住宅ローン・管理費):126,000 円

食費:8万7,000 円

水道光熱費:2万4,000 円

通信費 :3万2,000 円

生命保険料:2万2,000 円

日用品代:2万4,000 円

医療費:1万8,000 円

教育費:1万3,000 円

交通費:1万4,000 円

自動車関連費:2万4,000 円

被服費:3万5,000 円

交際費:1万5,000 円

娯楽費:1万8,000 円

し好品(夫のワイン):1万8,000 円

こづかい:6万円

その他:3万2,000円


横山:出産に伴い収入が減ることで家計が赤字になるというご家庭は、意外と多いものです。本当なら、休業に入る前に家計を整えておきたいものですが、それができなかったようです。収入が減っている状況はしばらく続くでしょうから、支出が減らせていないことに気が付いた今、しっかりと家計を改善しておきましょう。

育児休業手当の減額を見込んで支出を圧縮

育児休業手当は休業開始後6カ月間は休業開始前6カ月の賃金の67%。つまり取得者の収入の30%ほどが減るのですが、収支ぎりぎりで暮らしていたご夫婦はこの減額の影響をもろに受け、赤字になるケースが多いものです。

相談者様ご夫婦は、出産前は手取りで月に60万円ほどとのことですが、支出状況を見ると全体的に支出が多いメタボ家計になっており、貯金はあまりできていなかったのではないかと思えます。実際の貯金額を見ても、今の生活費の7カ月弱分ほどですから、生活防衛資金としては十分とはいえません。

あと1、2カ月で育児休業手当金は賃金の50%に減りますし、さらに赤字を増やすことがないように、今のうちにしっかりと支出を見直しましょう。

家にいるからといってそれほど支出が減るわけではない

産休、育休を目前に控えていても、「家にいるようになると仕事に通っていた時ほど支出しない」と安易に考え、何も対策を取らない人がいるのですが、それは「定年するとお金をかけない暮らしができるだろう」と老後の暮らしを楽観視する老後の入り口に立つ人と同じです。いざその時が来ると、「こんなはずではなかった」となってしまうのです。

お子さんが生まれると、おむつや洋服、洗剤など気を使うことが多くなります。急病で病院に行くなどタクシー代などもかかるかもしれません。仕事を休むことになり減った支出もあるでしょうが、増える支出も多いのです。収入の減り具合を見ながら、支出の増減のバランスをとることも考えていかないと、家計はうまく回りません。

支出の見直しに家計簿を生かして

収入減を前提に支出の増減のバランスをはかるには、必要で増えてしまう支出を優先しながら、カットできる支出を見つけ、減っている収入の中に収めることを考えていかなくてはいけません。そのカットすべき支出を見つけるためには、相談者様ご家族が毎月、何にいくらを使って暮らしているのかを知ることが必要です。

その「知る」ために必要なことが「支出の記録」なのですが、相談者様はすでに家計簿をつけていらっしゃいます。それを活用しましょう。今まで、家計簿の内容を振り返ったり、支出1つずつについて必要だったか、それほど必要ではなかったか等の判定をしたことはあるでしょうか。

家計簿は、記録することで満足しがちですが、実はそれだけでは役割を果たしていません。記録をもとに前月と比較したり、支出の内容を振り返ったりする事で、その役割を果たすのです。お子さんが生まれて忙しい中でも家計簿をつけているのなら、せっかくですから活用して、家計改善に役立てましょう。

家計簿を見てみると、「食費が前月より高かった」「休業中なのにどうして洋服代がこんなにかかっているのだろう」などと気が付くことが多いはずです。インターネットショッピングが多かった、ストレス発散のつもりで買い物をしすぎたなど反省できれば、それが支出の仕方に気を付けるきっかけとなります。

続けるとうまく貯金に活かせるように

しだいに買い物をする時に「これは本当に必要かな」と考えるようになるでしょうし、買い物の時に自分に「必要かどうか」を問いかけていくと、簡単にあまり必要と思えない買い物をしなくなります。

また、家計簿があると、先を見越してお金の使い方を計画することも可能になります。保育園代が増えると、家計がどうなるのか、どこの支出を減らして増えた分の帳尻を合わせるとよいかなどを考えていきやすくなります。

貯金の目標を作ろう

今後、相談者様の収入は復職したとしても、減額された収入となるということです。前述のように今の手当金での暮らし方に慣れ、貯金もできるように支出をコントロールしていただきたいものです。

貯金をするために支出をコントロールしていくには、モチベーションを維持できることが大切です。そのためにも、「何のために支出を減らし、貯金をするのか」という目標を立ててみましょう。

「子どもが幼稚園に入る前に、200万円貯めよう」「子どもと一緒に海外旅行に行くために100万円貯めよう」など、近い将来に叶えたい事柄とその金額を設定してみましょう。漠然とした目標よりは、達成可能な目標を掲げ、1つずつクリアしていくことが、貯金力をつけていくことにもなります。

生活防衛費・3年以内に使うお金・10年以上使わないお金

近い将来に叶えたい目標のほか、達成していただきたいのは「生活防衛資金」を貯めることです。病気や失業など予測できない収入減に備える貯めの貯金です。金額は毎月の生活費の12カ月分ほどを目安にしましょう。ここ3年以内に使う予定のある資金は、生活防衛資金とは別に貯めていただきたいので、近い将来に叶えたい目標のお金は、生活防衛資金とは別に準備することになります。

生活防衛資金ができた後は、老後資金や今からならお子さんの大学進学に向けた資金など、10年以上使わないようなお金を準備するために、長期分散投資を検討してもよいと思います。リターンを狙った投資ではなく、コツコツ積み立て、時間を味方につけ、複利でお金を膨らませていく投資の方法です。

このように取り組んでいくと、相談者様の家計事情は大きく好転すると思います。暮らし方の変化に今は家計状況が付いていけていないのだと思いますが、復職してさらに忙しくなる前に、家計を整えられるよう動いてみましょう。

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