土呂久「水質は回復」 坑道工事完了で説明会

環境復元対策工事の概要を聴き、大切坑内部の状況を見学した地区住民ら

 高千穂町岩戸・旧土呂久鉱山の主要坑道「大切坑(おおぎりこう)」の水質改善工事が3月に完了したことを受け、同町は27日、現地などで住民説明会を開催。約50年間行ってきた環境復元事業が、全て終わったことを報告した。
 報告会には地域住民18人が参加。土呂久公民館で町建設課の佐藤雄二課長らが事業の概要を説明した。それによると同事業は1971(昭和46)年に始まり、総額は14億円。坑外に放置された鉱石の残骸からヒ素が溶け出さないよう覆土や植栽をしたほか、水田の土の入れ替えなどを行った。
 2006年には坑内での工事に着手。流れ出る地下水のヒ素濃度を下げるため、坑道の内壁にコンクリートを吹き付け、ヒ素を含む水がしみ出るのを防いだ。今年3月には坑口から535メートル奥の地点に到達し、工事は完了。水質は安定的に回復している。
 住民は大切坑内部に移動し、現在の様子を見学。ヒ素鉱害の語り部として活動する佐藤慎市さん(68)は「工事により水質が安定し、みんな安心して使えるようになった」と述べた。佐藤元生(もとお)館長(64)は「大切坑は環境教育の材料にもなるだろう」と話していた。
 江戸時代初期に銀山として開発された土呂久鉱山は、1920(大正9)年から62(昭和37)年の閉山まで、ヒ素や亜ヒ酸を製造。多くの住民がヒ素中毒とみられる症状で亡くなった。

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