応援の声が支え コロナ禍での中東派遣 佐世保配備の護衛艦隊員 上陸制限、「3密」懸念

中東派遣を振り返る徳田3尉(左)と黒﨑2曹=護衛艦「きりさめ」の甲板

 新型コロナウイルス禍の中、佐世保に配備されている海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」が5月から約5カ月間、中東に派遣された。寄港地での上陸が制限され、「3密」も懸念される艦内で隊員はどう任務に当たったのか。派遣隊員2人が振り返った。
 海自の中東派遣は、日本の原油輸入量の約9割を依存する中東海域で、日本関係船舶の航行の安全を確保するのが目的。きりさめは5月10日に佐世保を出港。第1次隊の護衛艦「たかなみ」(横須賀)と交代し、6月9日から10月6日までオマーン湾やアラビア海北部で活動した。

 最大の課題は、新型コロナが世界的に大流行する中での派遣任務だったこと。護衛艦は閉鎖空間で感染が広がりやすい。米空母では集団感染も発生していた。このため、きりさめは佐世保を出発した後、乗員約200人のPCR検査を実施。2週間は日本近海で健康状態を観察した。
 情報収集の中心を担う船務科の徳田直都3等海尉(29)は、24時間態勢で目視やレーダーなどで船舶警戒にあたる隊員約50人を指揮。船の位置や針路を確認する船舶自動識別装置(AIS)を活用し効率化を図った。
 補給港などでの上陸は制限。海外派遣の際、寄港地で現地住民と交流したり文化を体験するのも醍醐味(だいごみ)の一つだけに、「隊員たちは精神的につらかったと思う」と徳田3尉。海自は、派遣隊員の精神的負荷を軽減するため、家族らと連絡できるよう艦内に無線LAN「Wi-Fi」を整備。隊員同士の交流イベントを企画したり、筋トレ器具を設置したりした。
 「正直、不安は大きかった」。こう語る黒﨑隼平2等海曹(32)は長期間の海外派遣は初体験。機器類の整備に従事し、40度を超す酷暑下での作業など「つらい」と感じる場面もあったが、家族との連絡や、会員制交流サイト(SNS)で自衛隊に寄せられる応援メッセージが心の支えになったという。
 「あらためて、周囲の支援がなければ任務遂行はできないと感じた」と黒﨑2曹。徳田3尉と黒﨑2曹の2人とも、派遣中に第2子が誕生した。わが子と会うのを励みにしたという。
 20日、第4次隊が青森県むつ市を出港。政府は今月、中東派遣の1年延長を閣議決定し、佐世保から再び派遣される可能性もある。徳田3尉は「派遣隊員のモチベーションを維持できるような環境整備が重要になる」と課題を語った。


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