恐怖接待?

 「ネーミングの妙」は時として、不祥事にも当てはまる。深夜、公費を使ってタクシーで帰宅する国家公務員らが、運転手から酒やおつまみ、商品券を受け取るという問題がかつてあった▲「タクシー居酒屋」という造語をご記憶の方も多いだろう。運転手は携帯番号を職員に渡す。高額のチケットを切ってくれる客を“お得意さま”にしようと、接待に手を尽くす。13年前に問題化した▲さかのぼって23年前には、大蔵省(現財務省)の職員が民間からしゃぶしゃぶ店で接待されていたのが明るみに出た。そのネーミングはおくとして、これを機に、利害関係者との付き合いは国家公務員の「倫理規程」で厳しく縛られていく▲全くもって古めかしく、言語道断の「接待漬け」と言うほかない。菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社による接待問題で、総務省は「利害関係」があると見なして職員11人を懲戒処分などにする▲倫理規程そっちのけの接待に、ひょいと乗っかる公務員の気が知れないが、心に恐怖と忖度(そんたく)があったのは想像がつく。「菅さんの息子に呼ばれて断ったら、わが身はどうなる…」と▲首相は長男が関係していたのを認め、陳謝した。「恐怖接待」か「威光接待」か、いずれにせよ「国難」と呼ばれるこの局面で、国民はしかめっ面をさらにしかめている。(徹)


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