大阪はすでに「アウトブレイク」専門家が指摘 吉村府知事に求められる“本当の実行力”

定例会見を開いた吉村大阪府知事

新型コロナウイルスの新規感染者が連日の1000人超えを記録するなど、感染拡大が止まらない大阪府は14日、新型コロナ対策本部会議を緊急開催。吉村洋文知事(45)は府民に対し「不要不急の外出をお控えいただきたい」と訴えた。さらに、吉村氏は5日から適用しているまん延防止等重点措置の効果が見られない場合は、昨年並みの強い内容を伴う緊急事態宣言を要請する考えも示したが、専門家は現状がすでに「アウトブレイク」だと指摘。吉村氏に本当の“実行力”を求めた。

大阪府では14日、新たに1130人が新型コロナウイルスに感染。前日の1099人を上回り、過去最多を更新した。

第3波に比べて感染速度が速く、50代以下でも重症化しやすい特徴を持つ変異株の猛威に、3月20日に55人だった重症者は239人に達した。これは重症者の病床数232床を上回っており、239人のうち20人は軽症中等症受け入れ病院で継続治療せざるを得ない状況になっている。

こうした状況に吉村氏は“医療崩壊”の言葉は避けたが「極めて厳しい状態」と発言。「とにかく人流を減らすしかない」として、小中高校での部活動の休止や大学のオンライン授業、テレワークの徹底を要請し、「不要不急の外出を自粛いただきたい」と強く呼びかけた。

危機的状況だが、5日に適用されたまん防の効果が見えてくるのは2週間後とあって、吉村氏は「感染の山が抑えられているという判断ができれば、まん延防止措置をより徹底してくださいとなるが、そうでなければ緊急事態を要請したい。中身は前回よりも強い内容を。国は今からその準備をお願いしたい。僕は強い危機感を持っている」。最終的な判断は国にあるとした上で、人が外出するきっかけになるような百貨店やテーマパーク、ショッピングモールに休業要請する必要があるとの認識を示した。

医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏は大阪の状況を「緊急事態どころではない異常事態。近隣にも広がっており、まさにアウトブレイク、感染爆発です」と指摘。英国型変異株の流行は2月ごろから指摘されていただけに「大阪も兵庫も見通しが甘すぎる。先を見越してやるのが基本なのに、変異型に対して見通しをしなかった。取り巻きがマズいんでしょう。兵庫県の井戸敏三知事のうちわ配布もそう。考えれば分かるのに誰も止めない」と批判した。

一方で、不必要な対応も少なくないと指摘する。大阪市では市内4万店の飲食店の感染対策を確認する見回り隊が活動しているが、「研究で指摘されているが、変異株になってからの飲食店からの感染は現状では全体の1割。非効率で貴重な府の職員の無駄遣いですぐやめるべき」とバッサリ。

救急医療や防災に連携して取り組むべく、関西2府4県など12の構成団体でつくる「関西広域連合」についても「こういう時こそ機能しなきゃならないのに無力。意義が問われている」と斬り捨てた。

古本氏がこうも厳しく話すのは、感染がいまだ上昇フェーズにあるからだ。

「収まる要素がなく、ピークはゴールデンウイークになる可能性がある。その間、ワクチンもなく、重症化した患者を受け入れるサイクルも円滑にいかず、死者が増えるという状況になるだろう。コロナの傾向からすると、関西が収まると今度は東京で爆発的に増える」

ここまで危機的な状況に陥った背景については「第3次救急医療体制はこうした事態を見すえているから、平常時には確かに無駄に見える。維新の会が府と市の一体化を目指して、無駄なものとして力を入れなかったのを市民が支持した面もある。そのツケが回ってますね」と分析した。

コロナ対応を巡っては行ったり来たりを繰り返し、“やってる感”との批判も少なくない吉村氏だが、古本氏は「本当に感染者を減らしたいなら大阪府をロックダウンするしかない。そして、ワクチンの確保。国に頼っているとなかなか回ってこないので、知事が直接、ファイザーやアストラゼネカといった薬剤メーカーと取引する。“実行力がある”とは本来そういうことだ」と行動を促した。

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