【東京五輪】開催へ訴え続けるのはいまだに〝精神論〟 国民感情との温度差が浮き彫りに

情だけで五輪は開催できるのか

東京五輪への風当たりが日増しに強まる中、東京五輪・パラリンピック組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、日本政府、東京都、国際パラリンピック委員会(IPC)による「5者協議」が28日にオンラインで開催された。

この協議では選手向けの新型コロナウイルス対策をまとめた「プレーブック」改訂版(第二版)が確認され、観客上限数の判断を6月に先送りすることが合意された。IOCのトーマス・バッハ会長(67)は冒頭あいさつで「粘り強く、逆境にあってへこたれない精神」と日本を褒めちぎり、同席した橋本聖子会長(56)も相変わらず「安心安全」を連呼。日本国民の「情」に訴える言動が随所で目立った。

顕著に表れたのが会見だった。協議後は橋本会長、武藤敏郎事務総長(77)が約30分の囲み取材に応じ、その後に開かれたIOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長、中村英正ゲームズ・デリバリー・オフィサー(GDO)の会見は日本時間深夜まで続いた。

専門家の知見を取り入れたブレーブックは約60ページにわたり、確かに具体的な対策は記されていたが、会見はデュビ氏による精神論からスタート。「非常に大変な作業の結果できたもの。この背後には強い決意が潜んでいる。たくさんの決意が盛り込まれている」と口火を切ると、さらに「アスリートも同じ決意を持っていて、東京にやって来る決意を持ってやっている。みんな楽しみにしている」と続けた。

ようやく質疑応答に移り、いち早く具体的な話を知りたい記者から「プーイブックの内容に違反したケースの認定は誰が行うのか? 違反行為の告発があった場合はどう対処するのか?」と質問が飛ぶと、デュビ氏は「それは非常に稀なケースだと思います」と話した上で「今の時点におきましては正確なプロセスが決まっているわけでありません。そんなケースは発生しないとことを望んでいます」とまさかの願望論で締めくくった。

一方、医療体制について記者団から「選手と関係者の総数は何人を想定しているか、必要な検査の技師は何人が必要か、その数字を示してくれないとこの対策が本当に実行可能か判断つかない」と追及された武藤事務総長は「おっしゃる通りです」と言いつつも「全体の医療関係者のご協力を仰ぐ際に議論しているところ。まだ結論が出ていませんので、この段階で数字を申し上げるわけにはいきません」と具体的な話は出て来なかった。

安全が担保される具体論を欲する国民に対し、いまだ感情論を武器に突き進む主催者。一連の対応で、その温度差が浮き彫りになっていた。

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