「雨水」の頃に

 「三寒四温」と言うように、暖かな日が続くと思っていたら、きのうは一気に冷え込んだ。列島では冬の嵐が吹き荒れた地域も多い。きょうにかけて大雪になる所もある▲県内ではきのう、雪が時折、舞い降りた。1月上旬の大雪は記憶に新しいが、今冬の雪はそろそろ見納めだろうか。きょうは二十四節気の一つ「雨水(うすい)」で、雪が雨になり、氷が解けて水になる頃とされる▲私たち国民の心にも、雪が解け、氷が解ける「雨水」が来ると思いたい。新型コロナ感染症のワクチン接種がきのう、国内で始まった。安全性を調べるため、医療従事者が先んじて接種し、県内では22日に始まる▲生活苦という寒風にさらされる人が数多くいる。先行き不透明で、心の凍える人がいる。景気は冷え込みを増す。感染を収めるはずのワクチンは、ようやく差す陽光だろう▲3月の中旬以降はコロナ診療に関わる医師たち、4月以降には65歳以上、さらに基礎疾患のある人…と、春らんまんの季節に向けて接種を広げていくというが、見込んだ時期に見込んだ数を用意できるのか、いぶかる向きも強い▲雨水の頃は、早咲きの梅の花の見頃でもある。異名を春告草(はるつげぐさ)という梅に、待ちかねた春を早く告げてほしいと心急(せ)く。長い長い厳冬を耐える人、耐えかねる人はなおさらだろう。(徹)

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